「そして、新たに作った運命を、ラグリュートとおぬし達は立派にやりとげた。感謝しよう。」 ブライが、混乱しながらも、マスタードラゴンに問い掛ける。 「そ…れで、ラグ殿が・・・死ななくてはならなかった理由とは…?」 混乱した頭を、無理にでも元へ戻す。今は、自分の歩んできた道を悔やむ時ではない。 今ここで、氷に包まれた、友を暖かな世界へ取り戻す為に、ここにいるのだ。 「デスピサロ…地界の勇者は滅んだ。進化の秘法と共にデスピサロは滅んだが、私が与えた勇者としての力は肉体を逃れた。 …その力は、新たなよりどころを探す。そしてその力は、吸い込まれるように …今まで自分がいた、もっとも近しきものへと宿った。もう判るだろう、 ピサロが持っていた勇者としての力は、デスピサロの魂が崩れると共にラグリュートに宿った。」 ピサロが死にし時に生み出された緋き光球。導かれるようにラグへと入り込んだ。…それを はっきり覚えている。 「不完全な進化で肉体が崩れる。それは強大な力に肉体が耐え切れなくなるからだ。進化の秘法を行ったものは、 必ず人ではない者へと変わるだろう。進化の秘法は人ならぬ膨大な力を与える。 だが、例え力だけ加えられても、肉体が弱ければ思うように力は発揮できぬ。 そして、人の姿では器として小さすぎるのだ。私が竜の姿をしているように、 進化の秘法の悪しき力は、対象者を人ではない、邪悪な化け物の姿に変える。 …少しでも多く力を蓄えられるようにだ。その力を使いこなすことが できれば、あるいは人としてまた変化できるやも知れぬがな。」 キングレオ、バルザック、エスターク…そしてデスピサロ。力が強くなるにつれ、どんどんと 醜悪な化け物になっていったのを思い出せた。…そして、力弱きキングレオは元の姿に 戻れたにもかかわらず…他は、力に耐え切れず、崩れていってしまったのを。 「ラグリュートは、長き旅で自らの力を私の予想以上に強く していた。…そして、より力強く宿命付けられた魔族の勇者の力は、デスピサロの願いによって、 更に強い力を内包していた。…その二つを宿したのだ。ラグリュートは、私よりも強大な力を手に入れた。 だが、肉体は…その力に耐え切れなかった。よくぞ、あそこまでもったものだ。だが、すでに生きる力をラグリュートは 失っていたのだろう。わからぬが、おそらく二つの力を宿した時に既に全てを知っていたのではないだろうか。 そして、内側から力を溢れさせ、身体は力に負けて崩れ出した。…心は、既に死を願っていた。… 生きる意志を失っていた。魂すら、その力に絶えかね…元の故郷の地で、全てを砕けさせた。 ……これが真相だ。」 「星の…お告げ…」 星の軌道の行く末を見守る占い師、ミネア。…冷や汗を流しながら、自らの意思ではないように ただ、言葉を…いつか、聞いた詞を、口からすべり落とした。 それは二人の勇者の一人が闇へと心を売り渡さん時。 ”対となる星、輝き出さん。” もう一人の勇者が、力をつけ、旅立つだろう。 ”その星、いつか天頂に昇り” ラグはやがて、天空城へと辿り着き。 ”まばゆき光を、放ち出す。” 神から力を授かり、さらに力を増すだろう。 ”その星光は、陽さえも勝り” その力はやがて、天の中央にいる、マスタードラゴンよりも勝り ”天界、地界を照らし出す” 天空や魔界、その全てを平和へと導くだろう。 ”いつかその星、堕ちるまで。” だが、その輝きはつかの間。やがてラグは、その力に耐えかね、輝きを失い死んでしまうのだ… …ラグがいないというのは非常に書きづらいです、本当に。私にとってラグがいてこその七人なのだなあ、 としみじみ思ったりしてます。そして、失った今、七人もきっとそう思っていると思います。 次回、最大のクライマックスです。七人は精一杯自分の思うままに精一杯生きると思います。正しいか、間違っているかなんて わからない道へ、一生懸命歩むと思います。…どうかここを見ている皆様、応援してやってください。
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