「来たな。」
 玉座に座るモンスターが悠然と言葉を吐いた。意外なことに、それはエスタークのような奇妙な化け物ではなく、 不気味な魔の神官のような姿をしていた。
 ラグが無言で剣を構える。玉座に座りながら、エビルプ―ストはそれを制す。
「まあ、待て。今愚か者が来る。」
「愚か者とは、私のことか?」
 気がつくと、後ろにピサロがいた。その言葉にエビルプリーストは嫌な笑みを浮かべる。
「ようこそお越しくださいましたな、デスピサロ。」
「慇懃無礼もいいかげんにしておけ。お前がそこに座る権利を誰が与えた?」
「権利とは滑稽な。そもそもあなたにそんな権利があったのですか?そこにいるエルフも守りきれず、ただ女の 事情で私たちを動かしていた、貴方に。」
 ピサロから怒りの波動が漏れる。
「そのロザリーを殺したのはお前だろう!!!」
 その言葉に、エビルプリーストの気配は変わる。
「いかにもそのとおり!ロザリーを亡き者にし、お前の自滅を誘ったのはこの私だ! わっはっは!この私が憎いか?しかし…あれほど蔑んでいた人間と手を組むとは、もはや恥も極まったな!」
「恥…恥だと?この間まで私に媚を売っていたお前ごときに言われたくはない!!」

 最初に切れたのは、やはりマーニャだった。
「恥ってどういうこと?あんたみたいな腐ったやつにそんなこと言われる筋合いはないわよ!」
「この間私たちにあっさりやられたこと、覚えてないの?」
 先陣を切る女性二人が喧嘩を売る。だが、エビルプリースト鼻で笑う。
「私の抜けがらを倒していい気になっているなぞ、所詮は人間。いや、かつての私なら、 お前達でも倒せたかも知れぬがな…どちらにせよ、もう遅いわ。 デスピサロよ、お前の時代は終わったのだ。見せてやろう、進化の究極を極めた私の新たなる姿を!」
 全身が邪悪な光に満ちる。一瞬の後、そこには魔の神官ではなく、今まで見た中で、 一番歪んだ化け物だった。
 生き物なら、生き物なりの美しさがある。それが例えモンスターでも神がつくったという統一性や 創造性がある。
 進化の秘法が進むにつれ、均衡がどんどんとつぶれていくのを感じていた。
 だが、これは違う。様々な生き物を掛け合わせ、それをぐちゃぐちゃにした、すでに生き物とも 呼べないものだった。
 ミネアが口元を抑える。吐き気がした。これはここに存在していい生き物ではない。それが感じられた。
 エビルプリーストが得意げに笑う。
「呪うがいい、真の王者と同じ時代に生れ落ちた己の不幸を!」
 それが、滑稽だった。
「なにが王者だ…シンシアを殺したお前を許さない。」
 そう言ってラグが無表情で、エビルプリーストに一太刀入れた。それが始まりの合図。
 最後の戦いが始まった。


 今度こそ魂も何もかも全てなくしてやりたい。
 それがラグの頭の全てだった。
 それは、気がついているだろうか?
 かつてのデスピサロの思考そのものだということを。

 妙なデジャヴを感じる。
 後ろから『勇者』を眺める。勇者はただ、一心不乱に剣を振るい、魔法を使い、ただ目の前の敵を打ち払おうとする。
 それは、ロザリーを失った時の自分と良く似ていた。
 あの時『勇者』を倒したのは、確かエビルプリーストだった。そして、さきほどの勇者の台詞を聞くと、 おそらくあのときの『勇者』はシンシアと言うもので、それが…勇者の大切なものだったのだとわかる。
 初めて、ピサロは我に帰った。
 正しい事をしていたのだと、信じて疑わなかった。ロザリーが生き返ったときも礼をしたとはいえ、 今までロザリーを苦しめていた過去を、忘れたつもりはなかった。
 だが、自分も誰かの『ロザリー』を苦しめていたのだ。殺したのだ。
 ここに、鏡がいる。魔と聖の鏡に阻まれ、同じ人生を歩んできたような、鏡が今ここにいる。
 ただ、一つの違い。
 ラグをサポートするように、いたわるように戦う七人の仲間たち。
 心置ける仲間がいる事が、自分と『勇者』の最大の違いなのだ。
 ラグに続くように、ピサロはエビルプリーストへ剣を振るった。


 二人の『勇者』と仲間の活躍の前に、ついにエビルプリーストの命の輝きがなくなっていく。
「ば、馬鹿な…それともこれも…進化の秘法が見せる…幻覚…なのか…」
「幻覚なんて、見てない。お前は死ぬんだ。シンシアを殺して、世界を支配する事なんて たくらんだお前の末路なんだ。」
 ラグが冷たく言う。
「我こそは…世界を…支配する…魔族の王…エビルプリーストだ…」
「不相応な夢を見るな、エビルプリースト。」
 今度はピサロが言った。そうして、今度こそ進化の秘法ごと、エビルプリーストは塵へと消えた。


 ここまで書きまして、おそらくあと2回だと判明しました。計ったように50話までっぽいですが、 ただの偶然です。
 ちなみに「男は女性に振り回されるように出来てますから。その中でたずなを握れるかが安泰の鍵ですよ。」というのは 私の理想論。男なんて女に振り回されてなんぼだと思うんだけどねえ。それでいざとなったら男がが女をコントロールできるような 男がいい男だと(笑)トルネコさん、いい男そうだな。

 次回は…あの人が出てきます。あの人、というよりあの方と言うべきか…
 では、次回もお付き合いください。

 

  


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