気がつくと、凄い騒ぎに巻き込まれていた。
「マーニャさん、やっぱり凄かったです!」
「写真とりましたよ、マーニャさん!」
 同じ学校の人間から、どう考えても無関係だと思われる人間まで、十重二十重にマーニャの周りに集まっていた。
(うちの学校の体育祭って、関係者以外は入っちゃいけなかったんじゃなかったかしら…)
 規則にうるさい方ではないが、これほどに堂々と校内をついてこられるのも抵抗がある。
「今日は打ち上げにのみに行きませんか?」
「そりゃいい、行こうぜ!!」
 と、周りは勝手に盛り上がっている。別にお酒を飲むことは嫌いではないのだが…
「でも、疲れてる時にお酒飲むと回っちゃうから、今日は遠慮しておくわ。」
「明日は休みじゃないですか、つぶれたら責任もってお送りしますよ!」
「こんな機会めったに無いんですし!」
「でも、今日は妹も待ってるし。」
 オブラートに包んで断るが、盛り上がった男達は意に介さない。
「いいじゃないですか、お祭りだったんですから、電話ででもお断りすれば。」
「ああ、なんでしたら妹さんもご一緒に。」
 ぐい、と腕を引かれる。さすがにムッと来た。
「あんたねえ!!」
「3年F組、テグラー、校則でお酒を飲むことは禁止されているはずだが。」
 割り込んだ、久しぶりで、聞きなれた声。
「げ・・・・」
「それから、2年D組、ルソン、1年G組クーガン…」
 一人一人の名前を読み上げていくライアン。生徒達が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「それと、おぬしたちは何だ?本日学校内は生徒関係者以外は立ち入り禁止のはず。生徒関係者だと言うのなら 何年何組の生徒の関係者か告げてもらおう。」
「お、おっまえ、誰だよ。」
「生徒指導担当のライアンだ。」
 そう真っ向から挑まれ、たじろぎながら逃げ出す男達。
 もう部活も引退したため、ほとんど会う事がなかった相手。

「これで二回目かしら。」
「なにがだ?」
「助けてもらったの。」
「そうだったかな。だが、職員室からも人だかりが見えていたからな。近からず誰かが止めに来ていただろう。」
「それも、前どっかで聞いたわね。」
「そうだったか。まあいい。疲れているだろう、気をつけて帰るようにな。また変な男に引っかからないように。」
 マーニャはいたずらっぽくくすりと笑う。
「そうね。まあ、引っかかったらまた頼むわね。」
「引っかからないように帰れ。」
「はいはい、気をつけるわ。…そだ、忘れてた。」
 行きかけたマーニャはくるりと振り返る。
「ありがと、じゃあ、また来週。」
「ああ、また来週。気をつけて帰れよ。」
 手を振りながら去っていくマーニャを、見えなくなるまでライアンは見つめた。
 職員室から見えた瞬間、大急ぎで走ってきた報酬は、あの笑顔なのだと、ぼんやりと考えながら。

 そして、マーニャは、この時のことを、何度も何度も思い起こした。
 遠い、遠い時になってしまった、幸せの最後の時を。


 そろそろ、日も傾こうとしていた。
(あー、今日は疲れたわ…でも、多分最後の体育祭だったのよね…)
 なんとなく、ノスタルジーな夕昏。そして、

 それをぶちこわす、赤いフェラーリと、
 忘れもしない、男の顔があった。
「よお、元気か?マーニャ?」
「…よくもあたしの前におめおめと顔を出せたもんね、バルザック!!!」
 父さんの地位を殺し、母さんを殺し、あたしたちを不幸のどん底に陥れた、諸悪の根源が、今ここに立っていた。

「新聞に載ってたよ、お前の事。立派になったもんだな。」
「…あんたには関係ないでしょう?」
「つれないじゃないか。かつては俺のことが好きだったんだろう?」
 いやらしげににたにた笑う男に、一瞬でも惚れいたことが、憎くて仕方が無い。だからマーニャは華麗に笑ってやった。
「いつのこと、言ってるわけ?そんな子供のことの話をされても困るわ?…ああ、どーせ女に振られて、あてがないから そんなむかーしの事掘り起こさなきゃいけなかったのね。」
 そう言って鼻で笑った。一瞬顔が歪んだ所をみると、どうやら図星だったらしい。
「…おまえがそんなに綺麗になるとは思わなかったんでな…俺の女にしてやるよ、来いよ。」
「父さんの研究で掴んだ職と金はどうしたわけ?それさえありゃ、あんたに相応しい馬鹿女は寄って来るでしょ? まあ、どんなあんたが金持ってても、あたしは興味ないわ。心いくまで落ちぶれて。」
「…そんなこと言ってもいいのか?」
 そう言うと、バルザックはマーニャの耳に顔を近づけ…思い切り、甘い言葉を、ささやいた。
 マーニャは一瞬、目をそらし、それから顔色を変えた。そして…
「なあ、お前にも悪い話じゃないだろう?お前は昔、俺の事が好きだったんだから、さ。」
「あら、冷たい事言うじゃない?バルザック…昔だなんて。…あたしはずっと貴方のことが、好きだったのに。」
 そういって、とろけるような笑顔を、バルザックへと向けた。


   楽しかったです。何がって運動会の組決めが。あとはきっと「せいじゃくのたまチーム」とか「ときのすなチーム」とか あるんでしょう。私の高校は三学年ランダムは一緒なんですが、(これってわかりにくいですか? つまり多分生徒会あたりがくじ引きした結果、1年D組と、2年F組と、3年C組が「さえずりのみつ」チームに 決まったというわけなんですけれど)、おかしなチーム名は決めないで普通に色分けでした。
 次回、第一回のヤマの予定。しゃきしゃき行きます!

 




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