トゥール達はすでに治療を終え、この先の相談をしていた。
「とりあえずリュシアの呪文で攻撃してもらって、それから集中攻撃、ってことでいいのかな?」
「そうね。私はあんまり役に立てそうにないし、他の敵からリュシアを守ったり回復呪文を唱えたり するために後方にいたほうがいいと思うわ。」
 そう言って、サーシャは少し落ちこんだ。
「やっぱり駄目ね。剣を習ってみても中途半端で。賢者って言うより器用貧乏だわ。」
「でもどれも使えるって事は色んなところで戦えるって事だし。僕も一応回復使えるけど サーシャには適わないし。力じゃセイには適わないし、魔力じゃリュシアだし。でも、 皆で戦ってるんだからいいんだよ、きっと。」
「…………。」
 サーシャはトゥールを見上げた。たった一人で戦い、死んでしまった英雄を思い出したのだ。
「ん?どうしたの?」
「なんでもないわ。そうね。トゥールが未熟なんだから私もそれで落ち込んでられないわよね。」
 そう言って立ち上がるサーシャ。その背中を見ながらトゥールは小さくつぶやいた。
「…もうちょっと別な言い方ならもっと可愛いのになぁ。」

 リュシアはサーシャを見上げる。
「サーシャ、まだ怪我治ってない?」
「大丈夫よ?どうして?」
「顔、赤い。熱?」
 サーシャは頬を押さえる。
「平気、ちょっと…その、熱いだけ。平気。」
 女二人を追いかけてきた男が顔を合わせる。
「あれ?セイ、顔赤くない?大丈夫?」
 トゥールの言葉に、セイはぶっきらぼうに答える。
「…別に、なんでもねぇよ。とっとと先に行くぞ。」
「そうよ、早く行きましょう。」
 サーシャとセイはそのままずんずんと先に進んでいく。
 その後ろで、わけのわからない二人は不思議そうに顔を見合わせた。


「駄目だな、こっちも行き止まりだ。」
 セイの言葉にトゥールがため息をついた。
「多分、全部行ったと思うんだけど…。」
「あとは、あの裂け目の向こう側だけね。古い洞窟みたいだから、老朽化したのかしら。」
 この廊下の先には大きな裂け目があって、トゥールたちの行く先をふさいでいたのだった。
「…似てる。」
 突然つぶやいたリュシアの言葉に、セイが首をかしげる。
「何だ?」
「似てるなって…、えっと、アリアハン出るときの。飛び降りたから。」
 リュシアの言葉に、トゥールは頷いた。
「ああ、いざないの洞窟だね。あの時は、ロマリアだったけど、今度はネクロゴンドってわけだね。」
「…今思ったんだが。」
 トゥールの言葉に、セイが顔をあげる。
「俺達何のためにネクロゴンドに行くんだ?」


「…」
「…」
「…」
 三人の時が一瞬止まる。
「なんか俺達、なんとなくこの洞窟に来てねぇ?魔王の城にはオーブを集めないと行けないんだろう?」
 セイの言葉に、トゥールはあせったように言う。
「いやでも、道が開けるって言って、ここに導かれたわけだから、きっと意味があるんだと思うんだけど…。」
「考えてみれば、私たちほとんど無意識というか、自然にここまで来たわね。」
「気がつかなかった。」
 サーシャとリュシアも覚醒したようにそう口にした。
「でもまぁ、ここまで来たんだから思い切って先に進んだほうが得だろうけどな。宝箱もあるかも知れねぇし。」
「そう思うならなんで言うのさ…。」
 トゥールが小さく愚痴るが、セイはけろりと答えた。
「いや、俺が忘れてるだけでなんかあったかなと。」
「でも教えてくれて良かったわよ。それにしても、どうして今まで気がつかなかったのかしら。」
 気がつくと、裂け目の前についていた。
「火山の勢いに飲まれてたのかもね。まぁ、頑張って行こうよ。僕から降りるね。」
 トゥールは苦笑からいつもの笑顔に変わり、裂け目から飛び降りた。覗き込むとトゥールがこちらへと手招きした。
「ま、最後まで付き合うとするかな。」
 セイも苦笑しながら、その後へと続いた。


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