終わらないお伽話を
 〜 セイの女難!! 〜



「砂漠の町、ドムドーラへようこそ。」
 町に入ったとたん、そう声をかけられた。ラダトームほどの活気はないにせよ、人々は普通に生活しているようだった。
「確かに周りは砂だけど…暗いせいかしら?あんまり砂漠って感じはしないわね。」
「まぁ、太陽出てないしな。それに結構緑もあるぞ。」
「水も、いっぱい。…オアシス?」
「あっちには牧場みたいなのも見えるよ。凄いね。多分ここ、元々宿場なのかな、いろんな人がいるよ。」
 真っ暗な海の中を進んできたトゥール達には、たとえ空は暗くとも人の営みは温かくて嬉しかった。
「そうね。暗くて寒いけれど、…人がいるというだけでどこか暖かいわ。」
「それに、貴方ような美しい人がいれば、この世界はもっと輝くよ。」
 嬉しそうにいうサーシャに、旅慣れた風の戦士がこちらに声をかけてきた。
「貴方もオリハルコンを探しにこの町に?」
「オリハルコン、ですか…?」
 思わぬ言葉を言われ、体よく断ろうと思っていたサーシャがその言葉に食いつく。 「違ったか。このご時世に旅なんてしてるなんて珍しいものだからてっきりそうかと。」
 そう言いながら近寄ってくる男に、セイはサーシャをかばいながら疑わしげな目を向ける。
「オリハルコンってあれだろ、神の金属とか言われるやつだろ?なんでそんなもんがこの町にあるんだ?」
「まぁ、噂なんだけど。ほら、ゾーマが伝説の武器を破壊したって噂があるだろう?ある時ゾーマの城から流れ星が 流れて、この町に落ちたっていうのを見たやつがいるんだ。それでもしかしたらって思って。」
「でも、壊れた武器の破片なんて、何に使うんですか?」
 さりげなくサーシャを男から遠ざけながら、トゥールが男に語りかける。
「いや、恩人がそういう仕事をしていてね。珍しい金属があれば譲ろうと思ったんだけど…僕には 見つからなかったよ。でもまぁ、目の保養をさせてもらいましたし、この町に来たかいがありました。」
 それでは、と爽やかに笑いながら、男は去っていく。どうやらナンパではなく、ただの人懐っこい旅人だったようだった。

「まぁ、とにかく。」
 まるで風のようにさわやかに去っていった男の後姿を呆然とみつめる三人に、場慣れしているサーシャが話しかける。
「情報を集めましょう。えっと、雨雲の杖のことと、魔王のこと、それからルビス様のことも。」
 サーシャの白い指が一本ずつ折られていく。
「それからオルデガさまのこと、さっきのオリハルコンのことも聞いておいた方がいいかしら?」
「…それ全部聞いていったらさすがに怪しいだろ。」
 セイの言葉にトゥールが苦笑する。
「そうだね、…まぁ、魔王のこと中心に聞いていこうよ。…二手に分かれる?やっぱり物騒だし。」
「んー、そうだな。俺達は単体で。サーシャとリュシアは一緒に行動しろよ。ここ結構広いしな。」
 サーシャとリュシアがそれぞれ頷き、三組はそれぞれに散開して行った。


 ドムドーラは広かった。商店が集まるところに、人々が生活するところ。そして膨大な 敷地を誇る牧場があって、とても砂漠の中とは思えなかった。おそらく、ここは日が 登っていてもイシスのようには暑くないのだろう。
(いいなぁ、ここ。なんだかホッとする。)
 広々とした牧場には馬がのびのびと走っていて、外の様子が嘘のようだった。
 何人かと話してみたところ、どこか朴訥でラダトームのぎすぎすした空気とは違うものを感じた。話しかけても 嬉しそうに答えてくれたのだ。もっとも得られた情報は隣町のことくらいだったが。
(次のメルキドは塀に囲まれているのか…。こんなに暗かったらちょっと閉塞感がありそうだなぁ。)
 広々とした牧場で、トゥールは大きく伸びをした。
「…ん?」
 一瞬、星を見たような気がした。空を見上げるが、まるで奈落のような暗黒が広がっているだけだ。
 もう一度、背伸びをしてみる。すると、牧場の奥でちかりと光った。
 そこから目線をはずさないように、トゥールは牧場の隅の隅、もっさりと茂った雑草を掻き分けた。





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