扉を開けると、しんと静まり返った暗い一本道の回廊。装飾が施されたたいまつが、僅かに 闇に抵抗していた。 やがてその道を進んでいくと、その先は大きな台座につながっていた。 「……嫌な感じ。」 「どうする、登る?横からも行けそうだけれど。」 「とりあえず厄介な仕掛けはなさそうだがな。」 トゥールは少し考えて、台座への階段を登る。サーシャたちはその後に続いた。すると、ゆっくりと、しかし 大きく低い、大地を揺るがす振動と音が響く。 「……あ。」 リュシアの膝が、地についた。震えた足では体を支えきれなかったのだ。正面を向くことも出来ず、 ただ振るえ、涙をこぼしている。 そこまでは行かないが、まだ姿を見せぬ今でさえ、セイはその威圧感に圧されていた。 「来る。」 あえて胸を張るトゥールが、そう小さく言った。その横で、サーシャも震えながらなんとか堂々と立って迎えようと している。 そして、悪しき魔の象徴が、姿を現した。 その体は、人の二倍ほどの大きさ。肌の青い色が、それが魔族だと告げている。大きな黒い兜に、紫の肩当て。その下は 魔術師風のローブだった。 異形と表現するには、比較的地味だといえる。だが、その威圧感はなんだろうか。 「トゥールよ!我が生贄の祭壇に、良くぞ来た!!」 そう響く声は、『良い声』と『不快な声』が交じり合った、人には出せない声。その声で紡がれる言葉は、ひれ伏したくなる ほどの威厳にあふれ、確かにそれは魔王なのだと示していた。 「お前が、ゾーマだな……。」 「そう、我こそがゾーマ。全てを滅ぼすもの。全ての生命を我が生贄とし、絶望で世界を覆いつくしてやろう!!」 トゥールの問いに、魔王は威厳たっぷりにそう答える。その言葉だけで十分だった。……喧嘩を売る理由には。 「くだらないな。たかだかそんなもののためにこんなものまで用意して。まったくもってくだらないよ。がっかりだ。 僕ならもっと早く達成するけどね。」 その言葉に挑発されたのか、それとも意に介してはいないのか。異形であるゾーマの顔からは分からなかった。 ただ、ゾーマは余裕を持った声でトゥール達にこう宣言して、姿を消したのだった。 「トゥールよ!我が生けにえとなれ!出でよ我がしもべ達。こ奴らを殺し、その苦しみを我に捧げよ!」 それに答えて現れたのは、つい先ほど幻影でみた、多数の蛇の頭を持つ、巨大なモンスター。……オルデガの仇だった。 「小細工が好きな魔王だな!!」 「むしろありがたいよ。こうして探さなくても、父さんの仇が討てるって言うのがね!!」 トゥールの言葉に、全ての蛇の目がこちらを向く。 「ほほぉ、お前はあの男の息子か……。お前も父と同じように、四天王の一人、このキングヒドラにぼろくずにされると 良いわ!!」 全ての蛇の口が開く。そして、トゥールに向かって一斉に炎を吐いた。 だが、相手が悪かった。 数々の激戦を潜り抜け、精霊女神に認められ、そして魔王すら倒したパーティーなのだ。 他の誰よりも、敵を倒すコツをわきまえていたすなわち。 補助魔法をいち早く使い、ダメージを抑えること。 「フバーハ!!」 サーシャの呪文がそれより早くトゥールたちと炎の間に滑り込む。 攻撃の手に惑わされず、冷静に相手を見ること。 セイが炎を切り裂くように敵に近づき、蛇をかいくぐり、足にけりを入れる。その強烈な打撃に、キングヒドラの体が ゆれる。 周りの状況にあわせ、フォローすること。 セイの後ろから、今度はトゥールが走った。回り込もうとしている。それに合わせて、リュシアは呪文を唱える。こんな時に 何を唱えるのが有効か、リュシアはもう知っていた。 そうして、最後に。 トゥールは背後から高く飛ぶ。 「バイキルト!!」 リュシアの呪文が、トゥールの体に力を与える。 そうして首がトゥールに届くより早く、トゥールは首の付け根に剣をえぐるように切りつける。 それは、かつて父が力いっぱい切りつけた場所。 相手の弱点を的確に突くこと。 キングヒドラは、高く吼える。その咆哮は苦痛に満ちていた。 そうして、あっけなくその魔物は地に伏せ、消えていった。 「こんなばかなばかな……。」 「父さんは、僕より強かった。」 それを見下ろしながら、トゥールはつぶやく。 「けど、父さんは一人だった。だから、僕はお前なんかには負けない。」 すでにチリと消えようとする相手に、トゥールはただそう言った。 オルデガ編でした。戦闘はあっさりとでごめんなさい。ゾーマではちゃんとやります。その前にあと2戦あるけれど。 戦闘シーンの引き出しが少ないのでごめんなさい。 その場ずばりじゃなくて、現象にしたのは「いくらなんでもそんなナイスタイミングはないだろう」+「時間系列 的に無理があるから」です。 |
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