やすらぎの場所直後のお話。


 ずしっとリュシアの体の重みが増した。顔を覗き込むと、リュシアが小さく寝息を立てていた。あれだけ 色々なことがあったのだ、心身ともに疲れていて当然だろう。
 セイは苦笑しながら空を仰ぐ。
(……恋人の前で警戒もなく寝ちまうリュシアに呆れればいいのか?それともその恋人をどうこうしてやろうと いう気がまったく起きない俺に呆れればいいのか?)
 ひょいっと、リュシアを横抱きにして、セイはリュシアの部屋へと歩いていく。子供達も疲れているようで、 寝言すら聞こえなかった。これならしばらくリュシアもゆっくり眠れそうだ。

 ふわふわふわふわいい気持ち。まるで雲の中のよう。柔らかなぬくもりは、ここなら何も心配なく眠れると知っている場所。
 そのぬくもりが消えて、リュシアは目を覚ます。離れそうになっていたセイの腕を、寝ぼけながらつかんだ。
「悪い、起こしたか?」
「……夢……?じゃ、なかった……よかったぁ。」
 さっきのことは、都合のいい夢じゃないかと思った。けれど、今、ここにこうして心配そうにこちらを見ているセイをみて、 あれは現実だったのだと、ぼんやりしながら考える。
「夢じゃねぇよ。……念のために朝まで俺が起きとくから、お前は寝とけ。疲れたろ。」
「ありがとう……セイ、大好き。」
 寝ぼけ頭で、リュシアはそう言って笑うと、セイは苦笑してリュシアの唇に唇を合わせた。
「おやすみ、リュシア。」
 ぱたん、と戸が閉まる音がして、リュシアはセイが出て行ったことをようやく悟って、ものすごい勢いで上半身を 起こした。
 そっと唇に触れる。あのぬくもりも、現実だった。
 心臓がものすごい勢いで高鳴り、頬は紅潮し、そして眠気はすっかりどこかにいってしまった。
「おやすみ、じゃないよ……セイ。」
 顔を隠してリュシアはつぶやく。今夜は眠れそうになかった。


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