すとん。軽やかにルーンが地に降り立つ。
 ふわりとスカートを翻し、リィンが大地に降り立つのと、大きな音で力強く地面に降り立つレオンを ルーンは見届けるとにこりと笑った。
「おお、おぬし、使ったか。」
 そこはムーンペタのはずれ。あばらやの前だった。老人がこちらに…ルーンに話しかけていた。
「久しいのう。その呪文を見るのは。ほれ、持ってくか?」
 老人の手には四角錘の水晶があった。美しい緑の光を放っている。
「ううん、僕、使い捨てにするから、迷惑じゃなかったら持っててください。」
「いやいや、わしを信用して預けてくれて、わしゃうれしいよ。」
「そうですかー。ありがとうー。」
 にこにこと話してるルーンにレオンが一撃を食らわす。
「てめ!どういうことだ!このじじいは、何者だよ!」
 その問いに答えたのは、リィンだった。老人に向かい、スカートをつまみ一礼をした。
「お初にお目にかかりますわね。ムーンペタの長老様。その噂お聞き及びしております。」
「おお…そなたはもしや…リィンディア姫…生きておられたのか…」
「長老様もご健勝でなによりですわ…ルーンがお世話になったようですわね。お礼申し上げます。」
「いやいや、こんな老人に仕事を任せてくれて、うれしい限りじゃよ。」

 二人が話している隙に、レオンはルーンに耳打ちした。
「あのじじいが持ってんの、なんだよ?」
「あれはねー。ルーラの基石だよー。」
「ルーラの基石?」
 たずね返すレオンに、ルーンは頷く。
「さっきの呪文。ルーラって言うんだ。決めた場所に一瞬で飛ぶことができるんだよー。」
「すげーな。」
「でもねー。一回行った場所じゃないと駄目なんだよー。でね、その場所を決めるのがあの石なんだよ。 あの石が目印なんだー。あんな石にね、魔力を込めるの。それが目印になってね、 あの石がある場所にね、ぴょーんって飛んでいくの。だからね、一回いった場所じゃないと使えないんだー。 今日の朝、おじいさんに預かってもらったんだよー。」
「使い捨てってのはなんだ?」
「うん、あのね。目印は一個だけなんだー。だからね、石を持ち歩くか、一箇所に決めてずっと置いておくか普通なんだけど、 それじゃ旅の途中に戻りたくなっても戻れないよね。だからねー、そういう時はたくさん石がいるけどね、次の町についたらね、 また魔力を込めなおすんだー。あの光が消えて、新しい石に光がこもるんだー。そしたら、前の石は目印じゃ なくなって、新しい基石が作れるんだよー。」
 途中からはさっぱりわからないが、レオンは一応頷いておいた。
「そーりゃすげーな。ま、頼むわ。」
「うん!」
 リィンとの話が終わった老人はルーンに笑いかけた。
「この石はわしが預かっておこう。いつでも帰ってくれるがええ。」
「お願いしますねー。」
 ぺこりと頭を下げた。そして歩き出す。
「じゃ、風の塔へ行くか!」
「風の塔は大陸の東、山脈を越えた場所にあると言われておりますわ。場所はわかるつもりです。行きましょう。」
「帰りはまた、ルーラで帰ってこようねー。」
「おう、任せたぞ。」


 風の塔までは遠い道のりだった。
 たとえ塔の先端が見えたとしても、そこから直線距離で行くことはできず、山脈を迂回し道ならぬ道を行かねばならなかった。
「ちょっと休もうかー。」
 汗を流すルーンの言葉でリィンのみならず、レオンまでその場に座り込むほどの道を歩かなければならなかった。
「結構きついなー。大丈夫か?ルーン?」
 ルーンもぺたんと岩にもたれかかり岩の冷気を味わっていた。
「大丈夫だよー。でも、どうしてこんな山奥に塔なんて作ったんだろうねー?」
「神事のためだと伝えられておりますけれども、ムーンブルク王国建国よりずっと以前の歴史ですから、あまり多くの ことは伝わっておりませんわ。」
 ようやく息が整ったリィンがルーンのつぶやきに答える。
「中の構造は?」
 レオンの問いに、リィンは首を振る。
「場所は大陸地図で知っておりますけれども、内部の構造はわたくしにもわかりません。風のマントが あるのかどうかも、確かなことは言えませんわ。」
「めんどくせーことになりそうだな…」
「ぐだぐだ言っていてもしかたありませんわ。そろそろ行きましょうか?」
 リィンが立ち上がると、二人も荷物を抱えた。そしてまた歩き出す。そんなことを何回も何回も繰り返し… ようやく風の塔へたどり着いた。


「結構高けえな…」
「大きいねー。すごいねー。」
「探すのに手間取りそうですわね。」
 ため息混じりに言うリィンにレオンが自信満々に言う。
「大丈夫だろ?宝ってのは一番上にあるって決まってるぜ。上を目指せばいいんだろ!行こうぜ!」
「単純ですわね。」  わざとらしくため息をついてみるリィン。
「でも、風のマントなんだから、風がたくさんあたる場所にあるんじゃないかなー?なら一番上が、一番 風に当たるよねー?ならレオンの言うこともあってるかもしれないよー。」
「まぁ…そうですわね。」
「ともかく行くぜ!ぐだぐだしてても仕方ねえだろ?」
 一人勇んでレオンは塔の扉を開け、中に入る。
「レオンー、待ってよー」
 とのんびり走っていくルーン。
「たしかに…レオンの言うとおりですわね。」
 そして、あきれながらもどこか嬉しそうな声でつぶやいて、リィンは後に続いた。


 ぎりぎり、風の塔に挑んだというか、なんというか…これでもルーラの基石の説明を大部分省いて なんとかここまで…(文章減らそうキャンペーン実施中。)なんとかセーブした場所にルーラは飛ぶという 設定をアレンジしてみたんですけどどうでしょうか?ちなみにキメラの翼は翼の下についているちいさな石が 基石の代わり…という設定とか、あのおじいさんは昔旅人のルーラの基石を預かる仕事を していたとか、いろいろ書きたかった…設定を本文以外で説明するのって駄目駄目だっていいますが、 そうなるとやたら長くなってしまうわけで…精進します。
 次回は…ドラゴンの塔に挑めるかな?どうかな?そろそろ本格的に本筋に入って行きたいな、 と考えております。お付き合いくだされば嬉しいです。よろしく。

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