10分ほど歩いただろうか。
「…いい加減、声枯れるぞ…」
 荷物を探り、水筒を出すが、中に水はなかった。
(なんか飲めそうなもんないかな…)
 もう少し荷物の袋を探ると、中から笛が出てきた。
(あの時もらったやつか…。これ吹くか。声枯れるし)
 笛を取り出し、吹いた瞬間だった。  ぱぷぺぽー、ぱぷぺぽー…ぱーぷーぺーぽーーー
「な、なんだぁ?!」
 もう一度笛を吹く。
 ぱぷぺぽー、ぱぷぺぽー…ぱーぷーぺーぽーーー
 山彦がかかり、延々と音が響き渡る。
「山彦?!」
 ラダトームで吹いた時は、間違っても山彦なんてかからなかった。
「塔の中だからか?」
 パタパタと足音が聞こえる。
「あー、居た居たー。大丈夫?怪我はない?」
「勝手に一人ではぐれないでいただきたいわ…」
 ルーンとリィンが向こうの廊下からやってきた。

「あー、やっといたか。そっちこそ無事か?」
「うん、大丈夫だよー。」
 ルーンがレオンの体を見て、小さな傷を治療していく。
「なぁ、これ、響くんだけどさ。」
 レオンの言葉にリィンは冷たく言い放つ。
「聞こえましたわ。塔ですもの、当然では?」
「だなぁ。」
「ちょっとかしてー、レオン?」
 そう言われてルーンに山彦の笛を手渡すレオン。
「見てみましたけれど、ここから別の階段はなさそうですわ。それと、音の響きに対してスペースが狭すぎますわ。 やはりどこかに別の道があると見てよろしいと思いますわ。」
「そっか、やっぱり降りてみるか。」
 そう言って、三人は階段から下に降りる。降りたとたん、ルーンが笛を吹く。
 ぱぷぺぽー…
「あれ?」
 レオンの声に促されるように、ルーンはもう一度笛を吹く。
 ぱぷぺぽー…
「山彦…響きませんわね?」
 リィンの言葉に三人は一気に階段を駆け上る。
 ぱぷぺぽー、ぱぷぺぽー…ぱーぷーぺーぽーーー
「…これ、何かに反応してるのかなー?」
 ルーンの言葉にリィンが不思議そうに言う。
「何かって…なんですの?」
「ここにあるものっつったら…紋章か?」
 レオンの言葉に、ルーンはにっこり頷いた。
「そうかもねー。」
「やはり他に部屋があるのですわね。風の塔のように、下から回るのかしら?」
「かもな。この階だって分かっただけでもいいか。行こうぜ!」
「うん!」


 階段から外周を回り、そして、少し開けたところに来た。
「あそこ!!」
 ルーンが剣を勢いよく抜き放つ。目線でさす先に、モンスターが居た。二人も武器を構え、慎重に進むと、 モンスターはこちらの気配を感じてか、逃げ出す。
「どうするー?」
「あちらに逃げたと言うことは、あちらに道があると言うことです。追いかけましょう!」
 三人が後を追う。だが、すぐ姿が見えなくなった。

「逃げられたか…」
 レオンの言葉に反応したのは、二人ではなかった。
「旅人じゃな?」
 そこに、一人の老人が立っていた。
「…あんたは?」
 レオンがいぶかしげに聞くが、老人は答えなかった。
「いやいや、何も言わなくとも、じじいには分かっとりますぞ、旅の人! ほっほっほ、ついて来なされ。紋章のある場所へ案内して差し上げましょう!」
 そういうが早いか、老人は駆け出す。ものすごいスピードだった。
「…案内してくれるってー。」
 にこにこと笑うルーンを尻目に、リィンとレオンは顔を寄せ合い話す。
「どうする?ボケてるだけか?」
「それにしては、あまりにもすばやい動きですわ。それに先ほどのモンスターにどうして襲われて おりませんでしたの?」
「ワナか?」
「その可能性があることを考慮しておりましょう。」
「いこうよー!二人ともー!」
 にこにこと、ルーンが呼びかける。二人は緊張した面持ちで、ルーンの元へと向かった。

 老人が歩いていった方向には、階段があった。そして、降りると老人が待っていた。だが、話しかける前に 駆け出す。こちらを見ようともせず、一目散に逃げていくような勢いだった。
「…ますます怪しいな。」
「ですわね。」
 怪しんでいる二人の横でにこにこ笑うルーン。
「おじいさん、足速いねー。」
 のんきなコメントに顔を見合わせる。
 そしてレオンたちでも足がすくみそうな足場を越え、たどり着いたのは小さな部屋だった。奥には 小さな宝箱がある。
「さぁ、あの宝箱をあけなされ。」
「わぁい、おじいさん、ありがとうー。」
 そうお礼を言って、宝箱に向かう。
「レオン開ける?」
「ああ。」
 そういうと、レオンが一度リィンと顔を見合す。リィンが頷くと、ゆっくりと宝箱を開けた。
「…空だ。」
 その言葉と、同時だった。
「ケケケ、ひっかっかったな!ここがお前たちの墓場となるのだ!!」
 その無防備となった背中に、モンスターが襲い掛かる。
 が。
「誰が引っかかったと言いまして?」
 リィンの言葉と共に、烈風がモンスターを襲った。モンスターの羽がもがれる。
「え?え?」
「ルーン、罠だ!行くぞ!」
 混乱しているルーンに、レオンが一声かける。
「うん!!」
 そして、ルーンにはそれで十分だった。

 あっという間に最後のモンスターが地に伏した。
「罠仕掛けなきゃやれねえやつらなんて、俺らの敵じゃねえよ!」
 そう言って敵に刺さったロトの剣を引き抜いた。敵の姿が崩れる。
「あ?」
「どうしまして?」
「大丈夫ー?」
 レオンの素っ頓狂な声に、二人が近寄ってくる。レオンは、モンスターの体から零れ落ちた不思議な布切れを手に取った。
「あ…」
「あ…」
「あ…」
 その声が同時に上がる。ゆっくりと、何かが心に入り込む。それは、たった一瞬。
「星の、紋章。運命と幸運を象徴するもの。」
 リィンの言葉に二人が頷く。
「何かが、入ってきたね。僕たちの中に。…運命は切り開けるって。幸運は、僕たちの手でつかみとるんだって、 紋章がそう言ってる…」
 紋章は、言葉にならない「心」を、三人に伝えた。
「ああ…分かってるさ。やってやるさ、俺は。俺たちは。」
 紋章を握り締めて、レオンは立ち上がる。星が刻まれた紋章は、三人の心に輝いていた。


 強さの中に刻まれるって何ですかーーーーーーー?今回一番悩んだことです。
 いえ、意味は分かってるんです。アイテムじゃなくて、強さの欄に表示されるんだよ、ってことなんです、ゲーム中では。 なんとかそれを形にできないかと今回苦心しました。そのまま消えちゃうのもいいかと思ったのですが、 とりあえず形として残しておきます。

 謎が減ったような増えたような。私にもちょっと分からないんですが(笑)さて、 三人にはこれからどこに行って貰いましょうか。
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