「田舎だなー、おい。」
 テパの村はさすがに人里離れているだけあって、牧歌的だった。
「空気が綺麗だねー。」
「皆、平和そうですわね…」
 入り口付近で話している旅人は、ここでは相当目立つのだろう。農作業をしていた 村人が、興味しんしんでこちらを見ている。
「こんにちはー。」
 ルーンが笑顔で手を振ると、村人も警戒心が薄れたのか、こちらに近寄ってきた。
「テパの村にようこそいらっしゃった。」
「こんな田舎におめーらにみたいな若いもんが何しに来た?」
「さてはモハメさんに会いに来たか?そりゃ無理だ、あきらめろ。」
 好き放題言う村人の一人が、そんな気になることを言う。
「モハメさん?って…どなたですの?」
 美しい娘にそんなことを言われて気を良くしたか、村人は快く話してくれた。
「うちの一番の職人だよ!ドン・モハメっていうんだがな。羽衣作りの名人なんだ!だがなぁ、 モハメは頑固でな。気に入った道具でないと仕事をしないって言い張って…もうよそ者からの 仕事は何年も引き受けてないなぁ…」
 周りの村人が、付き合いよくその言葉に頷いている。
「いい織り機と糸さえありゃ、いつでも引き受けるぞー、なんつってるけどよ。この間の旅の兵士が 持ってきた最高級の絹糸と、いい出来の織り機を見ても、怒鳴りつけるだけだっつってさ、孫が愚痴っとったよ。」
 その言葉に、なにやらひらめくものがあった。レオンが、それを口にしようとした時だった。


「旅の人!貴方たち、強いですか!!」
 若い若者が駆け込んできた。
「あ、ああ?どうしたんだ?」
「強いですか?強くないんですか?貴方たちは世界を巡るんですか?」
 ほとんど涙ぐんで、若者はレオンに詰め寄った。
「強いかどうかはわからないけど、困ったことがあるなら聞くよー?」
「あ、ルーン!てめ、勝手に…」
 レオンが怒鳴りつける前に、周りを囲っていた村人が、若者をレオンから引き離す。
「おちつけ、おまえさんよ、旅人さんに迷惑じゃろうが。」
 だが、若者はまったく気にしない様子で叫んだ。
「ラゴスと言うこそ泥が、この村から大切な水門の鍵を奪っていったのです!あの鍵がなければ二度と水門を開くことは できないでしょう…お願いです、ラゴスを捕まえて、水門の鍵を取り返してください!!」
 涙ながらに訴える若者の横で、村人がフォローする。
「こいつはなぁ、代々この村にある水門の管理人の一族なんだよ。自分の代で水門の鍵が盗まれちまって、責任を感じてるんだ。 良かったら俺たちからも頼むよ。」
「そのラゴスと言うのはどこにいるかご存知でして?」
 リィンの言葉に、村人たちは首を振る。
「わからん。だから、見つかったらでいい。頼む。」
「まぁ、それならかまわねーけど…その前に聞きたいことがある。いいか?」

 レオンの言葉に、村人が頷く。レオンは太陽の紋章を見せながら言う。
「こういう紋章を探してるんだけどな。お前ら知らないか?」
 その言葉に、ざわざわと村人が顔を見合わせ…そして全員が首を振った。
「そうか…」
 三人が肩を落とした時、水門の若者が口を開いた。
「ただ…この村は、此処から南にある『満月の塔』を守るために作られたと言われています。紋章のことは 聞いたことがありませんが、何か関係あるかもしれません。」
「そういえば、そのために来たんでしたわね。満月の塔には何があるの?」
「…月のかけらと呼ばれる不思議な石がある、と言われております。ただ、あの塔にはもう 何年も誰も入っていませんから、どこにあるのか、何のためにあるのか、本当にあるのかは誰も知りません。」
 若者の言葉に、ルーンがもう一度念を押す。
「紋章の話は…誰も聞いたことがないんだよね?」
「はい。それは間違いありません。うちはもともとは満月の塔の管理人の末裔なのです。 ですから…満月の塔に紋章がある可能性は…その、申し訳ないのですが、低いと思うのですが…」
 もじもじとする若者に、リィンは優しく微笑む。
「それでも、月のかけらと言うアイテムも気になりますわね。もし、それを見つけたら、借用してもよろしいかしら?」
「はい!」
 元気のいい若者の言葉に、レオンは満足そうに頷く。
「んじゃ、その満月の塔っていうのに、行ってみるか!どこにあるんだ?」
 その言葉に、若者は言いにくそうにこう告げた。
「…それが…その。ここから船で行くのですが…」
 そう言って、三人を塔が見える丘まで誘う。そこには干上がった河と、その向こう、はるか 彼方に見える塔があった。
「水門が閉じっぱなしで河が干上がってしまい、今は誰も行くことが出来ないのです。」
 そういわれるまでもなく、その道が絶望的であることが分かった。
 歩いていけば、何日もかかってしまう距離。そして、元は河だけあって、ずいぶんな悪路だった。中心にはほのかに 海から流れた水があり、体力を奪ってしまうだろう。
「つまり、ラゴスから鍵を取り返さなきゃ、どうしても駄目っつー事が…」
「はい!」
 若者は嬉しそうに答える。それを少し憎憎しげにレオンは言った。
「いっそ、水門壊すってのはどうだ?」
「…レオン、下手をすると村が崩壊してしまいますわ。もう少し考えて物事を口にして下さる?」
「ごめんねー、レオンの冗談だから、そんなにおびえないでね。ありがとうー。」
 にらむリィンの横で、ルーンは若者にフォローをする。若者は少しおびえていたが、何度も頭を下げて、家へと 帰っていった。


「振り出しに戻っちまったな。」
 伸びをしながら、レオンはそう言った。海から流れる風が心地よかった。
「そうでもありませんわ。…少しでも前進しておりましてよ。」
「そうだねー。とりあえずラゴス…の前に、いったんローレシアだったよね。」
「ああ、ロトの印とか…親父がロトの防具の行方を知ってるかもしれねぇし。」
 リィンが少し心配そうに言う。
「けれど…連れ戻されないかしら…?レオンもルーンも親に無許可で出てきたのではなくって?」
「僕は大丈夫だよー。また抜け出せばいいからー。」
 にっこり笑うルーンに、レオンは一瞬迷ったようだった。
「こっそり…いや、さすがに兵士に止められるか…?」
「レオンー、僕も説得してあげるから、行こうよー。」
「そうね。わたくしからもお願いすることにしますわ。いえ、わたくしが願わなければならないのですね。 わたくしの仇討ちなのですから。」

 空の河の上に流れる雲を、三人は見つめていた。
 それはとても空虚で。それはそれゆえに美しく。
 リィンの髪をなでる風が、ゆっくりと流れていった。


 テパ一回目はあっさりです。織り機も鍵もありませんでしたので。次に再開する時はかなり物語が 進む時になります。
 といいますが、なんだってテパの皆様、あんな田舎に住んでいるのですか?実際あそこに行って 死にかけた人も多いはずです。何回首狩り族に惨殺されたと思ってる!!…でも月のかけらを 守るためなのかなーと今回考えた場合、結構納得が行くような気がしました。実際あの 水門はただもんじゃないですよ、絶対!ええ、もう。そう信じてます。しかしそうするとあの首狩族は、 水門と月のかけらを守るために…?もしかして私悪役?

 次回はローレシアに逆流ー。サマルトリアまでいけるかどうか…ああ、ゲームで考えるとものすごく効率の悪い旅が続く…

 
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