「ただいまー、ご苦労様ー。」
 森の中の王国。『失踪』していた第一王子がにこやかに歩いて帰ってきた。
「あ、…ルーンバルト様、お帰りなさい。」
 あっけにとられてか、兵士がそんな間の抜けた返事をする。
「うん、ただいまー。父様いる?」
「はい、いらっしゃいますが…」
「そう、ありがとうー。」
 にこにこと笑い、ルーンが城の中に入る。レオンは苦笑しながら、リィンは首をかしげながら後に続いた。
「…あれで…いいのかしら…?」
「…俺、前にも同じ光景を見たことあるぜ?これでサマルトリアの兵士は剣さばきの鋭さには定評があるんだから 詐欺だよな…」
「まぁ…城が平和なことはよろしいですけれど…これでは以前、セラの窓から入ったことには何の 意味もなかったんではなくて?」
「あー、あれは…」
 レオンが説明する前に、怒声が響いた。
「小僧!!見つけたぞ!良くもあのときだましやがって!!!!」
 そう言って、どすどすと足音が響く。あの時の下っ端兵士だった
「オスト!久しぶりーお疲れ様。今は休憩の時間なのー?」
 オストと呼ばれたその兵士はルーンの言葉に足を止めた。礼を尽くすためひざまずいた。
「は!ルーンバルト様!お帰りなさいませ!王子がこの不埒者を捕らえてくださったのですか?」
「不埒者ー?何したのー?」
「何もしてねぇよ。」
 その言葉に逆上した兵士が、怒鳴る。
「何もしてないだと!!お前はこの私をだまし、ぬけぬけと姫の部屋に入ったのではないのか!?姫に何かあったら 承知しないぞ!!」
「あれくらいのことで、見張りが目を離す方がわりぃだろ。だいたい文句があるならルーンに言えルーンに。姫に 伝言なんかしないで部屋に置手紙でも置いててくれりゃ…いや、その前にせめて勇者の 泉でおとなしくだな、待っててくれれば…」
「あははー、ごめんねー、レオンー。」
 レオンの言葉に、兵士が立ち上がり、レオンの腕を掴む。レオンはとりあえずおとなしくされるがままになっておくことにした。
「よりにもよって王子を呼び捨てにするなど許せん!!王子もこのような者に謝るなど!!……………レオン?」
 そこまで叫び、兵士が止まった。

「…………………」
「オスト?大丈夫ー?」
 固まっている兵士の前で、手をひらひらする。リィンが不思議そうにつぶやいた。
「けれど不思議ね?ムーンブルクでさえ、レオンが竜の勇者に瓜二つなのは有名でしてよ? この方はアレフ様の絵姿を見たことがないのかしら?」
「オストは絵とかに興味ないからねー。」
 フォローになってないフォローを入れるルーン。リィンはにっこりと笑って、レオンを見た。
「それ以前にレオンに威厳がないせいかもしれませんわね。 乙女が憧れる王子様の言う職業なのですから、ローレシアの国民はお可愛そうに…」
 しみじみというリィンの言葉に、レオンは躍起になって言い返す。
「んだと!お前だって世の男が憧れる王女様っつー職業のわりに可愛げがねーだろーが!!」
 少しだけ顔を暗くしたリィンだったが、すぐに冷たい目で言い放つ。
「お生憎ですわね。わたくしは確かに可愛げはないですけれど、誇りと威厳には自信がありましてよ? ねぇ、ルーン?」
 振られたルーンはにっこり笑う。
「うん。それにリィンは可愛いよ?レオン?。」
「お前、俺を裏切ってお世辞言うのか…?」
「そんなことないよー、僕、レオン大好きだよー」
 にっこり笑ったルーンの言葉に、兵士はもう一度反応する。
「レオン…」
「何でも良いが、そろそろ俺の腕放せよな…」
 気だるそうにいうレオンの言葉に、兵士は反射的に飛び上がり、土下座した。
「もももも、 申し訳ありません!レオンクルス王子様!知らぬこととは言えども数々の無礼を働いたことをお詫びいたします!!!」
「レオンが王子らしくないのがいけませんのよ。気になさることはなくてよ。」
「おい…」
 レオンの突込みを、リィンは笑顔でかわす。
「ではレオンに非はありませんの?」
「いや、それは…」
「あははー、そんなわけでね、オスト?レオンのことは許してあげてー、僕が悪いんだよー。」
 兵士はぶるぶると首を振る。
「いえ!そんな!でも!あの!その!!」
「あー、わあったわあった、俺は別に怒ってねぇよ。じゃあ、とっとと姫の部屋見張ってろよ。」
 ため息交じりの言葉に、兵士はばねのように立ち上がり、敬礼をする。
「は!わかりました!」
 そう言って脱兎のごとく駆けていった。


「おお、ルーンではないか!良く帰ったな。」
「うん、父様ただいまー。」
「旅に出たと聞いて驚いたぞ。」
「うんー。」
 これでいいのか?と揺さぶりたくなる話の流れだった。
「ムーンブルクのリィンディア姫も無事に帰ってきたし、めでたいことじゃな。困ったことがあれば、いつでも頼るが良い。 復興するにも一人ではなにもできぬだろうしな。」
「はい、ありがとうございます、サマルトリア王。」
「レオンクルス王子もルーンにつき合わされたのだな。ルーンはのんびりだから、大変だろう。ご苦労だったな。」
 もうまったくです、と頷きたいのをやまやまで、レオンは苦笑いをして言った。
「いいえ、ルーンにはいつも助けられてます。」
「えへへー。」
 笑うルーンをぎろりとにらむと、ようやくその意図が伝わったか、ルーンは話題を変える。
「ところでねー?父様、僕レオンとリィンとハーゴンを倒しに行ってもいいー?」
(遠足に行くんじゃねえんだから…)
 がくっと気を落としながら横を見ると、リィンも同じようなことを考えたのだろう、あっけにとられた顔をしている。
 だが、その言葉とは裏腹に、サマルトリア王はまじめな顔をして言う。
「ふむ、…それは、お前にとってどうしても必要なことなのか?」
「うん。…とても、とても大事なことだよ、父様。」
 そう答えたルーンの顔も、驚くほど真面目だった。
「そうか。なら行って来い。」
「うん!ありがとう!父様!それでね、ロトの盾、持って行ってもいい?レオンね、ロトの剣、装備できたんだよ?」
「ほう、そうか。レオンクルス王子、見せてくれんか?」
「はい。」
 そういうと、レオンはすらりとしたロトの剣を抜き、かざした。
「ふむ…まるで絵のようだな。たしかに勇者アレフに瓜二つのレオンクルス王子には、あの盾は良く似合うだろう。 もちろん用が済めば返還して欲しいがな。」
 感心していって言葉には、あきらかな好意が含まれていた。
「もちろんです、ご好意感謝いたします!」
「なになに、私も歴史の一部に参加したいからな。」
 鷹揚に笑うサマルトリア王に礼と別れをいい、レオンたちは王の間を出た。


「…お前の親父…すげーな…」
「うん、僕父様のこと、大好きだよ!」
「いや、そうじゃねえけど…」
 頭を抱える横では、リィンが一人で真剣な顔をしてつぶやく。
「ただ優しいだけでは国は維持できない…サマルトリア王はとてもお優しいけれど…やはり深いものを 抱えているのでしょうね…」
(…目の前にいる、その息子のように…。)
 ちろりとルーンを見ると、ルーンは嬉々として宝物庫へと二人を先導している。
 その後ろで、ちらりとレオンはオストの方を見た。…その無意識の行動が、何を意味しているのか…リィンは 知っているような気がした。
 あえて目をそらす。
「行きましょう、レオン。」
 知っているけれど、知りたくなかったから、そうにっこりと微笑んでみせた。
「ああ。…そうだな」
 向こうでは、宝物庫の扉を開けてルーンが微笑んでいた。二人はその扉へと足を運んだ。


 聖青色をした盾は、凛とした力を秘めていた。
「これが、ロトの盾だよ、レオン。」
 中央に金のラーミアを描き、ほのかに輝いている。
「見たことない金属ね…綺麗…」
「うん、僕も精霊の儀式の時に感動したよー。ロトの鎧も同じ金属で出来てるらしいよ。」
 レオンはそっと盾を手に取る。ロトの剣と同じように、吸い付くように手の中に収まる。
「意外と軽いな。」
「でも丈夫だよー。レオンに良く似合ってるよー。」
「さんきゅ。いい感じだ。」
 盾を持った腕をぶんぶんと振り回す。それは決して動きの邪魔にはならない。
 そんな二人をほほえましく思いながら、リィンは少しだけ遠い目で見ていた。 自分の…結局行われることはなかったあの日の精霊の儀式を思い起こしながら。


 ゲームして鍵が手に入ると、今までの町や村に行くことはお約束です。はい。今回はなんかそんな感じです。
 次回はこのままラダトームに向かわせていただきます。

 
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