その言葉に、レオンが固まる。
「…ちょっとまて。もしかして、俺が帰ってきてたこと、親父知ってるのか?」
「はい、ご存知であらせられます。おそらく王の間にはおいでにならず、私のところにいらっしゃるでしょうから 伝言を頼むと、先ほどの情報と共に伝えられました。」
 学者の言葉に頭を抱える。
「…ちくっしょう…嫌でも寄ってやればよかった…」
「レオンとお父さんは仲良しだねー。」
 にこにこと笑うルーンに、レオンはにらみをきかせる。
「お互いが理解しあっていると言うことは、良いことなのではなくて?レオン。それより伝言をお聞きになったら?」
 リィンの言葉に、レオンはなんとか体勢を立て直した。
「…聞きたくねえ気もすんな…で、なんだ?」
「はい、レオンクルス様。『地下牢にハーゴンの配下、邪神の信者を捕らえた。ロトの名において、これを 処置を任せる』とのことでございます。」
 その言葉に、レオンの顔つきが変わった。
「さんきゅー。」
 それだけ言うと、後ろを向く。
「…行くぜ、二人とも。」
「わかりましたわ!」
「わかった!行こう!!」
 そう声を合わせて、レオンの先導の元、地下牢に走り出した。

「レオン様!」
 見張りの兵士が声をかける。レオンは立ち止まった。
「親父から何か聞いてねえか?」
「…いえ、聞いております。一番奥の牢屋になります。レオン様の好きなようにするようにと。 …ですがレオン様心配です。私たちもお供に…」
「いらねえ。それより邪魔が入らないように見張ってろ。いいな?行くぞ!ルーン、リィン!」
 牢屋への扉を開けたとたん、かびた空気が鼻についた。
「…嫌な匂いだな。」
「ペルポイに続き…本来はわたくし達が来るような場所ではありませんわ。早く用を済ませましょう。」
「えっとぉ、一番奥だよね。?」
 ルーンが足を踏み出した時だった。すぐ横の牢屋が大きな音を立てる。見ると鉄格子に張り付いている大男が居た。
「おい!お前らなんで兵士が付いてないんだ?もしかして罪人じゃないのか?」
「わりぃが、お前には用がないんだよ。」
 そう言って去ろうとするレオンに、大男は笑った。
「なぁ、ここを開けてくれよ!!そしたらいいことを教えるぜ?」
「申し訳ありませんが、わたくしたち、罪人が知っているいいことになど、興味はありませんわ。」
「そう言うなって、綺麗なねーちゃんよ。俺はな奥の罪人が尋問されてた『紋章』っていうものを知ってるんだぜ?」
 その言葉に、三人の足が止まった。

「その紋章はー、なんの紋章のこと?」
 にっこりと笑うルーン。ただのでたらめならばこれに答えることは出来ない。だが。
「命の紋章だ。もっとも俺はその噂を知ってるだけだけどな。どうする?いいんだぜ?俺は。」
 にやにやと笑う大男。だが、これでも三人とも帝王学を学んだ身の上だ。それに簡単に乗る者はいなかった。
「そうか、じゃあそこに入ってろ。あとで尋問してもらえば良いだけの話なんだからな。」
「そうですわね。他に知るものがいないと決まったわけではありませんし。」
 冷たく二人が牢の前から去ろうとする。
「お、おいちょっと待てよ!尋問されたって答えねえよ!!いいのかよ!!おい、 俺を出せよ!!」
 一番後ろにいたルーンが、にっこりと笑う。
「えー、でもー、そこでもいいんでしょう?」
「…参った。ここから出たい。だから取引してくれ。」
 小さく両手を挙げて、降参の意をしめす大男。
「初めからそう言っていれば考えましたのに。…それで、レオン、どうなさいます?」
「…出すって約束するわけにはいかねえな。こいつが何をしたかもわからねえんだし。刑期を短くするっつーんでどうだ?」
「ええ、なんだよ!話が違うじゃねえか!!」
「…一生入っとくか?」
 にやりと笑う顔は、目の前の罪人以上に悪辣に見える。
「…良く似合いますわね。」
「レオン、かっこいいねー。」
 ため息をつくリィンと楽しそうなルーンを一にらみして、もう一度罪人に声をかける。
「で、どうするんだ?」
「今出してくれなくてもいいぜ。その代わり出来る限り早く出すように頼んでくれ。って…お前、 それだけの権限があるんだろうな?」
「それは心配しなくてよろしいですわ。レオンはこの国の次期国王ですもの。そうは見えないでしょうけれど。」
「わるかったな。まぁ、そういうわけだ。ちゃんと親父に掛け合っとくよ。で?命の紋章はどこだ?」
 目を真ん丸く見開いた大男だったが、どうやら出られそうだとうきうきと答えた。
「ロンダルキアに通じる洞窟っつーのがあるが命の紋章を持った男が、そこに入ったっきり行方がわからなく なってる。そいつは一人で入ったらしいからな。おそらくどっかでくたばってるよ。」
「つまり亡骸が持っているということですわね。」
「そうだよ、綺麗なねーちゃん。じゃあ、頼んだぜ、王子様!!」
 そう言うと手を振って牢の奥に引っ込んで行った。

「…あの言葉、信用できますの?」
 どうやらさっきから綺麗と言われているのが気に食わないらしい。まともに顔をしかめている。
「でもー、情報がないよりは良いよ〜。そうなのかもしれないなーって思ってるだけでも良いと思うよ。」
「まぁ、そういうこったな。いいんじゃねえの?それよりいくぜ。もっといい情報持ってそうなやつなんだからよ。」
 レオンの言葉に、ルーンが頷いた。
「そうだね。…聞かなくちゃ。ハーゴンは本当にロンダルキアにいるのかって…」
 そういうと、張り巡らされたバリアにトラマナをかけた。
 奥の牢屋はうかつには逃げ出せないように、周囲にバリアを張り巡らせているのだ。下手に歩くとそれだけで死んでしまう。
「二人とも、もう大丈夫だよ。行こう。」


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