牢の囚人は、一見神父風に見えた。牢の中央でただひたすら見えない空を見上げ、神に祈りを捧げている ように見えた。 …だが、持っているのはいびつな邪神を模した小さな像で着ている服も、どこかゆがんでいた。…この世でもっとも 神父に遠い人物。そんな風にも見えた。 レオンが牢の扉を開け、三人がすばやくもぐりこんだ。 囚人ならば出たいと願うはずなのに、その男はゆっくりと振り向いて…ゆがんだ笑顔を見せた。 「ほっほっほっほっほ…私をここから出してくれるのでしょうか?」 「さぁな、それはお前次第だろうな。」 レオンが笑った。神父も笑う。自らを擬態しようとせずに。 「それはありがたいことです。では、お礼をしなければなりませんね。」 「それは話が早いですわね。」 リィンが皮肉めいた笑みを浮かべる。だが、男は足元に置かれていた細長い物を取りあげる。それは 汚い布にくるまれていた。男はその布をはいで、こう言った。 「大変名誉あることです。あなた方の亡骸は、ハーゴン様の手土産になるのですからね…! ハーゴン様!!!…この手に神の炎を!!」 そう叫ぶが早いか、男は手に持っていた物を振り上げた。雷が、三人に降った。 「…あれは、いかずちの杖!!我がムーンブルクの城にあった宝!」 リィンは既に自分の武器を構えていた。 「これは、ハーゴン様が私に下さったもの。これで、貴方たちを神の御前に送って差し上げましょう!!」 また杖を振り上げる。リィンが居た場所に、雷が走る。 「それは、ムーンブルクの物でしょう?返してもらうよ!!」 ルーンが、男に走る。すばやく相手に切りかかるが、杖で止められ、雷を降らされる。なんとか逃れるも、場所が 遠ざかってしまった。 「俺もいるぜ!!」 ルーンの逆側から切りかかる。だが、切りかかる前に、雷がレオンに降った。 「レオン!!」 リィンが駆け寄ってベホマをかける。 「だいじょうぶでして?」 「ああ、なんともねーよ。でも、厄介だぜ、あれ。」 「当然ですわ。ムーンブルクに収められていたものでしてよ。」 少し自慢げに…そして少し寂しそうにリィンはそう言った。 「んなこと言ってる場合じゃねえぞ。」 今も、ルーンが呪文の直後に切りかかるが、雷で跳ね返されている。致命傷はないようだが、小さな 傷が出来ているのがわかる。 「…援護を頼む。俺が止めを刺す。」 「いいえ…援護はそちらが。わたくしが参ります。」 それだけ言うと、くるりとレオンに背を向けて、リィンは一つ、呪文を唱えた。 「マヌーサ」 幻影を見せる魔法の霧が、男の周りを包む。 「…こしゃくな!!!」 相手には何人ものリィンが見えているのだろう。手当たり次第に雷を打つが、どれも外れる。 その霧を切り裂くように、ルーンが男に切りかかる。男はかろうじて避けるが、ルーンの剣が男の腕を切った。 「く…」 「俺もいるぜ!!」 男の眼前にレオンが迫る。男はかろうじてそれを杖で受け止める。レオンはその体を、思いっきり蹴飛ばした。男は 軽く吹っ飛ぶ。 たたらを踏み、男はなんとかこけるのをこらえた。だが、その手を…いや、その手に持っていた杖を、リィンが掴んだ。 「…この武器、貴方に使うことを許した覚えはありませんわ。…その穢れた体、清めてさし上げます!! …この手に神の炎を!!」 そして、リィンは杖を引き抜き、振り上げた。いかずちの杖から発せられた稲妻が、男を炭になるまで焼き尽くした。 「…ふぅ…」 いかずちの杖を手に、リィンは息を入れる。ルーンが心配そうにリィンに近づいてきた。 「大丈夫?リィン?」 「ええ、怪我はないわ。」 「お前、無茶するな…」 「そうでもなくてよ。ところでレオン、ルーン。わたくしがこの杖、使ってもよろしくて?」 竜を模した杖。不思議な古代文字。あの男が持っていると非常にまがまがしく見えたが、リィンが持つとむしろ 神々しくさえ見える。 「いいと思うよー。もともとムーンブルクにあったものだもの。それにリィンに良く似合ってるよー。」 にっこりと笑うルーン。 「おまえのもんだろ、とっとけよ。それに俺は杖なんか使わねぇし、ロトの剣があるからな。」 ぶっきらぼうに言うレオン。二人のその言葉にに、リィンはにっこりと笑った。 「けど−、結局良くわからなかったねー。」 「命の紋章の情報が手に入ったんだしな、まぁ、来たかいがあったか?」 「とにかく、満月の塔に向かいましょう。紋章はないにしても、月のかけらというものは気になりますわ。」 「だな。じゃあ、とっとと織り機とって行くか。…またあの道を越えると思うと、ぞっとするけどな…」 レオンの言葉に、ルーンが顔をしかめた。 「どうなさいまして?めずらしいですわね、ルーンがそんな嫌そうな顔をするのは。」 リィンの言葉に、ルーンは笑う。 「だって、織り機持って山道だよー。大変だよー。」 「あー…それもあったか。」 「がんばってくださいましね?」 頭を抱えるレオンに、にっこりと笑うリィン。 「おめーも手伝えよ。」 「あら?わたくしが手伝ってもきっと役に立ちませんわよ。レオンの4分の1も力がありませんもの。わたくしは 敵の露払いをさせていただきますわ。」 リィンは美しく笑った。その横で、ルーンはそっと腕をなでた。 次回こそは!!満月の塔を!!というか、すっかり満月の塔編だと言った事を忘れておりましたよ、私。 すんません、次回こそは満月の塔を…いや、リィンがいかずちの杖を持っていたほうが見栄えが いいかなぁ、とか。 ところでいかずちですか?いかづちですか?ドラクエ結構この二つが混ざっててちょっと困る。ちなみにいかずちの 杖のデザインはファミコン版でお願いします(スーファミ版だと邪神官が愛用してる杖らしいので…) |
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