街門は美しい花で彩られていた。絶え間なく愉快な音楽が流れ、外から楽しそうな声が聞こえる。 「お祭りなのかなー?」 「そういえば港にも沢山の船が泊まっておりましたわね。」 ルーンとリィンの言葉に、街門の見張りの兵士が笑顔で答えた。 「ようこそ、デルコンダルへ!実はもうすぐ、我が国の王女様のイェスミーナ様の15歳の生誕日でして、この一週間 お祝いのお祭りを催しているのです!!」 「わーい、僕たちたまたまお祭りの時に来ることができたんだねー!」 にこにこと笑うルーンに、レオンが冷めた目線を投げる。 「…もしかして年中祭りやってるんじゃねーの?」 「どうしてそう思いますの?」 「この国に何人王子王女がいると思ってんだよ。あと王妃の数や結婚記念日、建国記念まで入れてみろよ。祝いの 日ごとに一週間祭りやってたら、祭がない日の方が珍しいんじゃねーの?」 街門をくぐると、レオンの言葉が正しかったことがわかる。普通なら急造のはずの屋台はやたらしっかりしたつくりで、年月が 立っていることが見て取れたのだ。 「辺境の大陸にあるデルコンダルが栄えたのは、この政策のためかもしれませんわね。祭を行えば人が集まりますし、 旅行客も呼び寄せることができますもの。仕事だって増えますし、税金だって集めやすいですものね。」 「人もお金を使いやすいしねー。」 そういうルーンも、あちらこちらの露天を見て、目を輝かせている。 「ルーン!お前また変な物買うなよ!お前がこないだ買った『無限に荷物が入る魔法の袋』だってすぐ破れちまったんだからな!!」 「なにやら不思議な文様が刺繍されているだけのあの袋ですわね…」 頑丈で、どんな大きさのものも入ってしまうと言う袋だったが、ためしに薪をいれてみたところ、あっさりとやぶれて しまったのだ。 「あははー、おもしろかったねー。」 まったく反省せずに笑うルーンに、二人は呆れ顔をしたが、お祭の雰囲気に浮かれているのは 二人も一緒だった。 微笑んで、お祭の町を歩き出した。 木の実にデコレーションしただけの簡単なお菓子や、肉をあぶって味付けしただけの素朴の食べ物をあっちこっちと食べながら、 三人は街中を歩き回った。よく城を抜け出していたレオンを以外には、旅に出なければ食べることが できないようなものばかりだ。そして、大道芸に笑い、道端で演奏される楽器の メロディに聞き入り、力比べゲームにレオンが挑戦し優勝した。 三人が祭を存分に楽しみ、街の端までたどり着いた。少し奥まったところにあるだけに、人通りは少なかった。 「楽しかったねー。」 「そろそろお城の方を尋ねないと、城門も閉められてしまいますわね…」 リィンの言葉に、レオンが体を反転させる。 「んじゃ、頼むわ。俺は宿を取ってくる。」 そのまま裏通りを進もうとするレオンの服の裾を、ルーンが掴む。 「どこいくのー?」 「もう、レオン!いい加減諦めればいかがですの?月の紋章がこちらにあるのでしたら、城を訪ねないわけには参りませんわ。」 二人の言葉にレオンが叫ぶ。 「街の奴に聞けばいいだろー。だいたい祭の間に他の王族なんかが城の中に入れるかよ!」 「二ヶ月も三ヶ月も祭が続きましたらどうしますの?ずっと宿を取りますの?」 「あははー、それも楽しいよねー。でもねー、宿代が大変だよー。」 「ルーン、お前こんな時だけ宿代の心配なんてしてるんじゃねえよ!!」 ルーンごと引っ張るように、レオンは裏路地へと進もうとした、その時だった。 「おうおう…にぎやかじゃのう…お客人…」 そんな声が聞こえたのは。 「誰だ!!」 「そんなに声を荒らげんでもいいんじゃよ…わしゃ、ただの占い師じゃ…」 裏路地の闇にまぎれるような黒いローブを羽織った老人が、そこにいた。良く見るとレオンたちは占い小屋の前にいるようだった。 「…そなたたち、何かお探しかな?」 「うん、そうだよー。」 ルーンの明るい声に、老人は一瞬目を見開くが、ゆっくりと頷いた。 「…そうか…なら、占って進ぜよう…」 「おい、俺らは金払うなんて言ってねーぞ?」 「おぬしらが此処に来られたのも、精霊ルビスのお導きじゃ…気にせんでも良い…」 そういうと、老人は糸についた宝石のようなものを取り出して、なにやら文様が描かれた布の上でくるりと まわした。 くるくると円を描きながら、ゆっくりと収まっていくその回転運動を、三人は魅せられるように見続けた。 …だが、その宝石の動きはいつまでも、いつまでも収まらなかった。 「探し物は南・・・・・いいや、北・・・・いや違う、西・・・うむむ・・・東・・・か?」 「なんじゃそりゃ、全部じゃねーか。それだけ言や、そりゃ全部当たるだろうよ。」 レオンはため息を一つつくと、そのまま裏通りを引き返し始めた。 「おら、行くぞ!しゃーねーから城に顔見せてとっとと帰ろうぜ!!」 「待ってくださいませ、レオン!!」 「おぬしらの、真の探し物は…わしにはわからぬ、この世界ではないどこかにあるのじゃな…東西南北どこでもあり… どこでもない場所…」 その言葉を聞いていたのは、ルーンだけだった。リィンはすでにレオンを追いかけて、占い小屋の前を後にしていた。 「ありがとうございます。多分、当たってると思います、僕。レオンがごめんなさいー。」 「いやいや、いいのじゃよ。信じる信じないはそなたらの自由じゃからな。」 「うん、僕たち頑張りますー。」 ルーンがそう言ってぺこりと頭を下げる。そうして去ろうとするルーンに、老人が声をかける。 「…おぬしは…いまだ…旅を続けるのか?」 その言葉に、ルーンの笑みが消えた。 「はい、出来る限り、僕は旅をします。二人の手助けができるように。」 「そうか…ちょっと、待っておけ。」 老人はすぐ後ろの箱を探り始めた。しばらくして、小さな細長い筒のような物を持って来た。 手に収まったその筒はずいぶんと薄汚れていた。 「本当に困った時が来たら使うと良い…」 そう言って手渡された筒には継ぎ目があり、どうやら開くようだ。少し振ると、砂のようなものが入っている音がする。 かなり強い力で蓋を閉めてあったが何とか開けると真っ黒い粉が入っていた。何か不思議な匂いがした。 「これはなんですか?」 ルーンの言葉に老人は答えなかった。 「…これを使う日が来ることが、そなたにとって良いことなのかはわからん…使えんままならそれも良い… 使わんならそれが一番良い。使う日が来んかもしれん…じゃが…もしその日が来たときのためにとっとくがいい…」 「ありがとう。いただきますね。」 ルーンは粉をしまいこみ、厳重に蓋をした。そうしてもう一度頭を下げて、今度こそレオンたちの方へと歩き出した。 裏路地を出たところで、レオンたちは待っていてくれた。 「お前何してたんだよ?後ろ見たら居ねーからびっくりしたぜ?」 「あははー、ごめんねー。」 ルーンはいつもどおりにっこりと笑って手を振った。それを見てリィンも笑う。 「ふふふふ、手が真っ黒ですわよ。」 「あー、ほんとだー。」 タオルで手を拭いているルーンを見ながら、レオンはため息をついた。 「…諦めて城にいくか。とっとと行ってとっとと帰ろうぜ。」 「そうですわね、もうすぐ空も赤くなってしまいますわね。」 「そうだねー。うわぁ、デルコンダルのお城に行くのは初めてだよー、楽しみだよー。」 それぞれの思いを抱えて、お祭の町を歩く。 祭の雑踏の中。思うのは過去か、現在か、未来か。 その心がわからぬまま、三人はデルコンダル城へと足を進めた。 デルコンダル、ゲーム上では過疎地?と思うほど人がいないんですけどね…(笑)このあとのイベントの ためにお祭さわぎにしました。とは言え、この国はほぼ年中お祭さわぎです。誕生祭のほかにも 豊穣の祈りの祭とか、新年の祭とか言い訳をつけてずーとやってると言う設定なのですが。 冒頭に1Pつかったので、やたら話が短くなってしまったようで、ちょっと反省です。次回は デルコンダル城編。あと2回くらい続くかもしれません。 |
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