レオンの剣が、アトラスが持っていた棍棒を真っ二つにする。巨大な棍棒が、床に大きな音を立てて倒れた。 「…ヤルナ…」 「ったりめえだろ…」 かろうじて軽口を叩くが、レオンの息は上がっていた。 アトラスの力はとにかく強かった。幸い魔力がないらしく、呪文を使ってくることはなかったが、重い攻撃を ひたすらレオンに叩きつけてくる。 「…ナラバ、本気ニナロウ」 そういうと、アトラスは言葉にならない声で啼いた。肌に音が叩きつけられ、レオンは吹き飛びそうになる。 そして、そのとたん、今までの数倍の勢いで拳が叩きつけられる。… それを避けられたのは、まさに奇跡、神のご加護と言ったところだろう。レオンのいた場所の床はへこみ、 アトラスの拳は血にまみれている。 そして、その痛みを感じないように、アトラスはまた拳を上げ、今度はレオンにその拳をあてる。レオンはとっさに 身をそらしたが、それでもレオンの身体が吹き飛ぶには十分な強さだった。 そして、その衝撃でレオンの盾と荷物袋が飛ばされる。今、手にあるのは稲妻の剣だけだった。 「…くっそ!!」 レオンが怒鳴っても、アトラスは無表情で拳を繰り出す。 「コレデ、オ前ハ何モデキナイ」 無秩序に打ち出される拳は、軌道を読むことは容易だった。…だが、その圧倒的な手数に、やがて追い詰められ、 足元はふらつき…やがて避けることができなくなる。…そして、ついにアトラスの拳が、レオンを捉えた。 「…っく!!」 ついさっきまで、お互いが満身創痍だったのだ。だが、自分がベホマを使い始めると、相手も同じ呪文を使い始めた。 「…このままでは、魔力が切れてしまいますわね…」 「…そうだな…そしてお前が臓物をさらし、神の元へ向かう様は、とても楽しみだよ…」 「そうはさせませんわよ!!」 リィンはそういうと、雷の杖を振るう。だが、その雷は手で払いのけられる。 「…この程度の魔力が、このベリアルに通用すると思うのか?…ならば、こちらから行くぞ!!」 ベリアルの口から、大きな火炎が放たれ、リィンを包んだ。 パズズの爪から生まれた風が、ルーンの頬を薙ぐ。赤い赤い血が、ルーンの頬に流れる。 「ケケケケケケケケケケケケ」 ある種、一番やりにくいタイプだ。そこそこ呪文を使い、そして爪で攻撃してくる。…自分と同じ戦い方をする相手。 「ケケケケケケ、いつ死ぬか?今死ぬか?殺してやるか?」 「…凄いと思うけど…無駄口が多いと思うよ!!」 ルーンはそういうと、ルカナンを唱え、一気に走ってロトの剣で切りつける。バズズは爪をあわせてくるが、ルーンの呪文に よりやわらかくなっていた爪は、たやすく折れた。 「ケケ?!」 驚くバズズに、ルーンは一太刀浴びせるが、バズズはそのまますばやい動きで後ろに下がる。 「…本気に、させたな」 そのとたん、部屋に爆風が放たれ、ルーンの身体は吹っ飛んだ。 レオンの身体がまともに吹っ飛んだ。頭がくらくらとし、ダメージは肺まで来ているのか、血を吐きそうになる。 (っくっそ…このままじゃ、死ぬな…) 攻撃しようにも、身体がふらついてまともの当てられるようには思えない。普段なら回復してくれる誰かがいるが、 今はたった一人。薬草を使おうにも道具袋は自分の反対方向にある。 「…薬草ヲ使ウツモリダッタダロウ?ダガ、ソノ怪我デハ既ニ手遅レダ。ソシテ剣ヲ振ルウコトモ出来マイ。」 アトラスはそう言うと、レオンに向かい走り、拳を下ろした。 「…そうは、行くか…」 弱い声で、レオンは剣を握り締めて祈った。その剣から一直線にアトラスの一つ目へ稲妻が走る。 アトラスはまた啼いた。今度はただ1つの目を焼かれた苦痛の声だった。そしてその瞬間、レオンは走って道具袋に 駆け寄り、中の物を取り出した。 「あいにくな、人間様は、道具って言うものを使うんだよ!!」 そう言うと、レオンが掲げたのは力の盾だった。見る見るレオンの傷がふさがっていく。そしてレオンは盾を投げ捨て、飛んだ。 レオンの稲妻の剣が焼かれた目に深々と突き刺さる。 「…ナゼ、オ前ハ戦ウ…?何ノ為ニ、ココマデ来タ…?」 アトラスは、崩れ落ちながらそう聞いた。その問いに、レオンは少し考えて…こう答えた。 「…待ってる人がいるんだ。世界を平和にして、帰るって。…そいつらを守るんだ。…そのために、戦うんだ。」 「…ソウカ…生者ノ為ニ、戦ウ…ノ…カ…」 沈み込むような重い音とともに、アトラスは地面に倒れこみ、動かなくなった。 腕が燃えていた。とっさに抱きしめ、何とか火を消し止める。そしてベホマを唱えたところで… 魔力が切れかけていることに気がついた。もう、回復することも、攻撃呪文を唱えることもできないだろう。 「回復などさせぬ。そのままで死ね!!」 それでも、リィンは諦めなかった。すばやく呪文を唱え始める。 「させん!!」 ベリアルは持っていた槍をリィンに振るう。リィンはその槍を雷の杖で受けようとするが、リィンの細い身体ではそれは 受け止めきれない。 …はずだった。 スクルトで強くなったリィンはその槍を受け止めた。そしてそのまま下にしゃがみこむことで、 ベリアルの体勢を崩す。そしてそのまま雷の杖を後頭部に力いっぱいぶつけた。 「くらいなさい!!!!」 雷の杖から、魔力が生まれ、後頭部に爆発が起きる。何度も、何度も。…そしてその爆発音が30回もする頃だろうか… ベリアルの頭の骨が砕ける音がした。 「…お前にとって、戦いの『価値』とは・・・なんだ?」 ゆれる声で弱くつぶやかれた声に、リィンはこう答える。 「お父様、お母様、お兄様…わたくしの為に死んでいった、ムーンブルクの方々の誇りと名誉を 守り、仇を討つ…それがわたくしの戦いの目的ですわ。」 「…お前は…死者に…その価値を…見出したのだ…な…」 音を立てて、ベリアルがゆっくりと粉になっていき…そして消えた。 …目が、まともに見えない。真っ暗ななか、砂のようなものが走っている。 「動かなくなったか…たわいないな…」 静まりかえった部屋。そこにバズズに笑い声がこだまする。 「ケケケケケケケケケケケケケケケケケ…」 「ルカナン!!!」 目が回復するより前に、ルーンは呪文を唱え、そして声がするほうに走った。気配を呼んで 剣を振るう。そしてそれは細いなにかを切り裂いた。そして、直後に目の前を空気が走る。だが、おそらく 爪があるつもりで、ルーンをなぎ払おうとした後だろう。ルーンに当たることはなかった。 「ベギラマ!!」 目の前に向かって、ルーンは火炎を放つ。だが、目標を定めず撃った呪文は、バズズに当たらなかったらしい。そして、ようやく ルーンの目が回復し始めたその瞬間、パズズの足が、ルーンの腹に入るのを感じた。とっさに剣を伸ばし、吹き飛ばされながら がむしゃらに剣を振るった。 何かを切ったのを感じた瞬間、 ルーンの身体が空を飛び、床に叩きつけられる。それでもなんとか目の機能が回復してきた。 「…秘儀を、見せてやろう。」 バズズは呪文を唱える。それはあきらかに、今まで使っていた呪文の形態とは違う呪文。 目を開けると、バズズの片腕が床に落ちているのが見えた。そしてもう片腕を深く切り裂かれ、崩れ落ちながら、バズズはひたすら 呪文を唱える。 その呪文を聞きながら、無理やりルーンは身体を起こす。今の自分は、立っていられる状況ではないことは判っていた。… だが、ルーンはゆれながら走った。そのままバズズの腹の中に、剣を突っ込む。 「僕…その呪文、知ってるんだ……だから、完成させるわけには…いかない…よ…?」 「……なぜ、そこまでするんだい…?…楽に生き、楽に死のうと…しない…?痛い思いをして、 戦う理由は…なんだい」…?」 血を吐きながら言うバズズの言葉に、ルーンは迷わず答える。 「…自己満足の為だよ。僕が戦うって決めたから。戦わないのは、痛くないかもしれないけど、大切な人に 戦いを任せて生きるなんて、楽じゃないよ。苦しいもの。」 「…自分の…ため、か…それなら…悪く…ないぜ…」 空に消えていくバズズを、その場にくずれおちながらルーンは見守った。 設定に悩んで、原作を無視してみた話。 …だって、それぞれに似たような戦い方の敵が、味方と同数いるんだから、やっぱりタイマンで決着つけないと 嘘でしょう…? 最初は「ここは俺に任せて先に行け!!」系統にしようと思ったんですけど、最後合流できなさそうなので 断念しました。まー、実際一対一で戦って勝つのは、かなり無理そうなんですが。皆様はプレイ する際は、無理せず三対一で戦ってくださいね。 ちなみにタイトルに悩んだ話。すみれは普通の董ではなく、いわゆるパンジーの方です。 |
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