「ルーン!!?」
「どうしましたの?!」
 ルーンの言葉は優しさといたわりに満ちていて。二人は声を上げた。
「もう、やめようよ。そんなことしても、たとえ僕たちを倒してシドーを復活させても、貴方は幸せには なれないよ?やめようよ。今なら謝れば…許されないこともあるかもしれない。でも、いつか頑張れば、 今度こそ幸せになれるって、僕思うから。」
 レオンは、ルーンの肩をつかんだ。
「お前、ハーゴンを許すつもりか?!あいつはムーンブルクの人を殺して、お前に呪いをかけて…フェオを、殺したんだぞ!!?」
「…でも、レオン。僕たちがハーゴンを殺してしまったら、僕たちはハーゴンを許すことが出来ないんだよ。」
 リィンは、か細い声でルーンに問いかける。
「でも、ルーン…それでは、ムーンブルクの無念はどうなりますの?」
「うん、リィンの気持ちはわかってる。僕だって…本当は許せないんだよ…でも…」
 ルーンはリィンに微笑みかける。
「でも、覚えてる?竜王の孫は、僕たちを許してくれた。おじいさんを殺したのは、僕たちの先祖、アレフ様なのに。 …許してくれて、嬉しかった。もし許してくれなかったら、僕たち戦ってた。そうやって、いつまでも 憎しみの螺旋が連なるなら…いつまで経っても、終わらないんだよ…」
”代わりに、終わらせてくれ。もう被害を出させないでくれ…誰も殺さないように…終わらせてくれ…この、事態を…”  フェオの声が聞こえた。
(…こういう、事なのか…フェオ…?)
「僕は、許す勇気が持ちたい。大切な人たちを…殺してしまった人を、許す勇気が…」
 そういうルーンの向こう側に。確かにロトの勇者の姿がかぶって見えた。


「…許してくださると…お優しいことだな。そう、ルビスの神も我らにこう言う。許されぬ罪はないと。」
 そうつぶやいて、ハーゴンが笑う。
「いかに聖書が嘘を説いているかが判るものだな!!許すだと?上から見下す、『お優しい』ふりをする人間が 言いそうなことだ!!」
「ルビス様まで…ルビス様まで貶める気ですの!!」
 リィンの言葉に、ハーゴンは叫ぶ。
「ならばなぜ、お前たちはここにいる?ルビスが私の存在を許さなかったからではないのか!!」
「…それは…」
 言葉に詰まったリィンに、ハーゴンは重ねる。
「お前たちに加護を与え、民衆には罰を与える…随分と神というのは不公平なものだ。…それでは 我々には幸せなどない!!」
 そういうと、ハーゴンは呪文を唱え、爆風を起こした。
「お前たちを殺し、シドー様復活のための、儀式を!!!」
 爆風で飛ばされながら、三人は武器を構えた。


 剣を構えるルーンに、リィンは叫ぶように問いかける。
「ルーン!!いいの?!」
「許したいよ!!…でも、絶対に、シドー召喚なんてさせない!!駄目なんだよ!!それじゃ、誰も 幸せになれないのに!!」
 ルーンは、知らず涙を流す。…流すなんて、思っていなかった涙。
「本当は、そんなことを望んでたんじゃないよね…ねえ、思い出してよ…一番最初…どうして貴方が、その道を選んだのか…」
 同情ではない。ただ、失われてしまった夢が余りにも切なくて、哀しくなった。



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