「先手…必勝!!」
 レオンは飛び上がり、シドーの尻尾を切り刻まんと剣を突き出す。そのとたんシドーの炎が 三人を包んだ。
「レオン!!」
「だい、じょうぶだ!!」
 掲げた力の盾で、レオンは傷を治した。
「スクルト!!」
 ルーンの祈りのよって、三人に守りの加護がつく。
「イオナズン!!!!」
 リィンの呪文がシドーに向かう。爆発がシドーを襲う。その煙の向こう側からシドーの爪がリィンを襲った。
「リィン!!」
 リィンは杖を床に突き立て勢いを止めることで、壁に叩きつけられるのを防いだ。
「…大丈夫ですわ!!…呪文は効かないんですの?」
「いや!!効いてるぜ!!」
 シドーの肌にはわずかに傷があった。それは血も出ないほどの、かすかな傷。だが、それでも十分だった。
「では、これで!!ルカナン!!」
 シドーの守りの魔力が下がっているのを感じる。
「いくぜーーーーーーーーー!!」
 レオンは走る。今度こそ尻尾を切り捨て…地に落ちたシドーの蛇がびちびちとうごめいた。


 今の自分たちに必要なもの。


 シドーの目玉が動く。ようやくこちらを敵と見なしたのか、凍るような目つきでこちらを見た。
「…させない!!」
 レオンのシドーの爪が向かうのを見て、ルーンは守護の呪文を重ねがけする。レオンはロトの盾でその攻撃を防ぐ。
「…ぐ…」
 そうしてもなお、身体が飛ばされそうな衝撃を受ける。
「レオン!大丈夫でして??」
 心配そうに言うリィンに、いつもの笑みで答える。
「ああ、なんともない!!大丈夫だ!!」

 必ず勝てると笑う力強さ。

 リィンがシドーの元に走りより、攻撃が来るより一瞬早く、イオナズンを唱える。爆風とともにシドーの腕が リィンの胸を捕らえ、そのまま弾き飛ばす。
「リィン!!」
 回復呪文を唱えながら、小さくリィンが手を振った。

 傷つくことを恐れずに、一歩でも前に出ること。

 シドーの炎によって、三人の身体が燃え上がる。その炎を振り払い、ルーンは回復魔法を唱える。だが、次の瞬間 シドーの爪がルーンを切り裂く。
 大量に流れる血を、再び回復魔法でふさぎながら、立ち上がる。今度は攻撃呪文を唱えるために。
 くじけず何度でも立ち上がる勇気。

 そして。

 汗と血をぬぐい、レオンは叫んだ。自らを奮い立たせるために。
「行くぞ!!」
「ええ!!」
「うん!!」

 信じる、力。


 何度も死にそうになりながら何度も切りつけ、呪文をぶつける。それは、どれくらたった時だろう。
 シドーの攻撃も徐々に激しくなり…そして少しずつ動きが鈍くなっていっているのを感じた。
『勝てる』
 闇の中に、一筋の光が見えた、そのときだった。
「うぁぁああああああああああああああああああ!!」
 シドーに切りかかろうとしたレオンに、大きな口が迫り…レオンをそのまま飲み込んだ。
「「レオン!!」」
 シドーはそのまま飛び立ち、こちらを見下ろす。次はどちらにするか決めかねるように。
「リィン、さがって!!」
 ためらいなど、何もなかった。今ならレオンを助けられるかもしれない。もし駄目でもリィンだけは守れる。 禁断の…最後の呪を唱える。自分のために、自分の大切な仲間を…大好きな人を守るために。
 そして、最後の旋律を舌に乗せようとしたその時だった。

「ルーン!!見て!!」
 リィンが叫び、シドーの腹を指差す。そこには、星屑の煌き。そしてそれはやがて、稲妻の輝きをともなって 広がる。
「…もし、かして…」
 ルーンの呪文が止まる。じっと腹を見据えた。シドーは気がつくと悶え、必死に空中で暴れている。
 そして、腹を引き裂いて現れたのは、レオンだった。血と体液にまみれながら力一杯叫んだ。
「ルーン!!リィン!!今だ!!」
 二人はすばやく呪文を唱え、放つ。
「ベギラマ!!」
「イオナズン!!」
 爆発と炎がシドーに向かう。ちょうどそれは光の十字架のように、シドーを突き刺した。
 光の十字架の中でシドーが吼えた。その時間は永遠にも近いと思えるほど、長く。そして 高く、低く、啼き続けた。
 それは最後の慟哭か、呪詛か。…それとも、哀悼か。天まで 届くその声が消えた時…シドーの身体がゆっくりと粉になり、崩れていった。



 
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