ハーゴンが起こした儀式の火が消え…空にあいた闇がゆっくりとふさがっていく。…それは儀式の 破却を意味するもの。
「…おわ…り、ました…の…?」
「あ…あ…」
「おわ・っ・・た…。うん、終わったよ!!」
 ルーンの言葉に、二人の力がどっと抜ける。二人の武器がころんと床に転がる。三人が同時にへたりこんだ。 思わず笑い出した。
「ふふふふふふ」
「あははー」
「あははははははははははは!!」
 三人が笑い合い、大爆笑になる。おなかが痛くなるまで笑い続けた。…そして静寂。心地よい その静寂に、三人は心を癒した。

 外の吹雪はまだ冷たく、ゆっくりと火照った身体を冷やしてくれる。
「…終わったね。」
「…ええ。…そういえば、レオン、大丈夫ですの?」
 リィンの言葉に、ルーンが身体を起こす。
「そうだよ!!食べられちゃったんだよ…ね?」
「ああ、なんともないぜ。ちょっと不気味だったけどな。…さぁ、帰ろうぜ。俺たちの世界に。」
 レオンはそう言って立ち上がる。
「うん!!」
 ルーンの立ち上がり…リィンに手を伸ばす。リィンはその手に触れようとして…止まる。
「…でもわたくし、一体どこに帰れば…いいのかしら…?」
「どこだっていいんだよ。リィン。待っている人がいれば。リィンのこと必要だとしてくれる人が いるなら、そこがリィンに帰る場所だよ。」
 ルーンの言葉。リィンその言葉に微笑みかけた。そのままルーンの手をにぎり、起き上がる。
「そうね。…きっとそう。わたくしの居場所は、これからわたくし自身が作り出すものですわ。ね、ルーン。」
「うん!」
 きゅっとリィンは手に力をこめる。…その想いが伝わるように、願って。
 その空気にあてられながら、レオンは頬を軽く掻く。
「そうだな。…でもまぁ、とりあえずローレシアに来いよ。どうせ親父が領土がどうの、支援がどうのって 言ってくるんだろうし。」
「うん、それがいいよー。サマルトリアとも近いから、僕もセラも嬉しいよ。僕も送っていくから。」
「そうですわね。ロトの印も帰さなければなりませんもの。」
「それを言うなら盾もだな。国際問題になっちまう。」
 そう言って笑う。もう、ロトの印も、盾も、何もいらないのだ。それが嬉しい。とても、とても 嬉しかった。
「さぁ、帰ろう。俺たちの守った世界に。」


 城を出ると、白い大地にしんしんと雪は降り積もっていた。周りからはモンスターの気配も、魔力の風も ない。やがて分厚い雪雲は晴れ、ここもまた聖地として復活することになるのだろう。
 ちょうど三人が出るのを見計らっていたように、神殿ががらがらと崩れ落ちていく。
「ああ…崩れちゃう…」
「いいえ、これでいいのよ、ルーン。汚れた神殿をもう一度使うことはないわ。」
「ああ、何度でも建て直せばいいさ。ハーゴンの脅威も、シドーの事も忘れられたころにさ。 な、フェオ。…そうだろ?」
 レオンは後ろに話しかけた。すっかり雪が積もり、小さな基石…いや、墓石すらも隠れていたが、 それでもその場所は忘れない。決して。
「ええ、お兄様…いと高きこの地で、どうか世界の全てを見守ってくださいませ…」
「終わったよ、フェオ。何もかも。もう、誰も殺されない。邪神はこない。安心してくれ。」
「ありがとう、フェオさん。」
 墓の前で三人は祈った。頭に雪が積もるまで。
「また、来るよ、フェオさん。元気で。」
 ルーンの言葉に、二人も顔を上げた。
「んじゃ、祠に戻るか。あいつらも心配してるだろ。」


 祠は相変わらず静まり返っていた。
「…おかしいですわね?あの方々なら魔力の奔流が消えうせたことを察知して、出迎えて下さりそうなものですけれど…」
「まぁ、色々事情ってもんがあるんだろ。行こうぜ。旅の泉でひとっとびだ。」
 レオンの言葉に三人は足を進め、礼拝堂の扉を開けた。
 そこには牧師がいた。来た時と同じように祭壇にいた。…だがその顔は青くどこかぐったりとしていた。
「どうしたの!!?」
 ルーンがそう叫び、駆け寄った。横の扉が開き、神父より真っ青な顔をした修道女が入っていた。
「あ、あああ…勇者様、勇者様方、お許し下さい!!お許しください!!!!」
「どうされましたの?何がありましたの?落ち着いてくださいませ!!」
 リィンが修道女に駆け寄った。錯乱している様子の修道女は、ひたすら三人に許しを請い、泣き叫んだ。 神父はその声を聞いて、嘆きの声を上げる。ルビスに慈悲を、神に祈りを、ただひたすら唱え始めた。
「…どういうことだ…?なにが、なにがあったんだ?もう、ハーゴンも、シドーもいないんだぜ…?」
 レオンの呟きが、二つの嘆きの中に消えた。


 長い戦いが、ようやく終わりました。旅の間、すれ違った三人の想いが、戦いが、今此処に終結しました。
 …戦い短めですよね…判ってるんですよ!でもシドーさん、ただの一言なりとも話してくれないんですよぅ!! 二次創作者泣かせのラスボスです…だってこの人(人じゃないけど)、呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーんって 登場しただけなんですもん…せっかくなので出来るだけ王道に攻めてみました。

 さて、御話はもうちょっと続きます。せっかくなので思わせぶりなところで終わらせてみました。 もう少しだけ、お付き合いくださいね。


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