「…ローラ様…」
 リィンはそっと、その破片を拾い上げた。布にくるむ。
「…どうするんだ?それ?」
「…持って帰りますわ。これはムーンブルクの秘宝なのですから。例え、ローラ様の魔力がなくなってしまっても… これはムーンブルクを守ってくれたものには変わりありませんもの。」
「うん…ムーンブルクが大切にしていたのは、ローラ様の魔力じゃなくて…ローラ様の心だもの。心は 今も、そこにあるよ。僕は…そう思うな。」
「ああ、俺もそう思うぜ。」
 にっこりと明るく笑うレオン。それは先ほどの様子が嘘のようだった。
「…レオン、ひとかけら…持って行く?」
 ルーンの言葉に、レオンは首を振る。
「…いや、いいさ。別に。」
「でも、レオンは、ローラ様のこと…」
 言うルーンの額を、レオンは指で弾く。
「ローラ姫は、とっくに死んじまったアレフ様の恋人だよ。ようやく、アレフ様の元にいけたんだ…。」
 レオンの顔には一抹の寂しさと、そしてすがすがしさ。
「…レオンは、これで、良かったと思っておりますの?貴方は、誰よりも、ローラ様にいて欲しかったのでは ありませんの?」
 リィンの言葉に、レオンは笑う。
「…ああ。多分幸せだったと思うぜ。ローラ姫は。…さぁ、帰ろうぜ。」
 その言葉は本心からの言葉だと、長い付き合いから二人には伝わった。
「うん。…あ、もう、旅の扉、戻ってると思うよ。封印が解けてるから。…そっちから帰ろう?」
「そうですわね。…早く帰りましょう。」
 レオンは深呼吸一つして、洞窟の出口へと飛び出す。
「…リィン、いこう?」
 ルーンはリィンに手を伸ばす。リィンはそっと手を重ねた。そして二人はレオンの後に続いて洞窟の外に出た。


 雪はほとんど解け、あちこちに川ができていた。暖かな陽の光が三人をまぶしく照らす。
「…綺麗だねー。」
「ああ。気持ち良いな。」
「本当に。」
 やがてこの大地にも生命の芽が芽生え、かつてのような恵みの大地へと生まれ変わるのだろう。
 祠に戻ったとたん、神父が出迎えてくれた。
「…皆様…お待ちしておりました。旅の扉がなぜかまた元に…」
「ああ、もう心配要らないぜ。」
 軽く応えて、レオンは手を振る。
「お疲れ様でした。皆様方なら必ずやってくださると信じておりました。 地上では、皆様の帰りを待ちわびていらっしゃるでしょう。邪悪な波動が消えて、世界に平和が 訪れたことも伝わっているはずです。どうか、早くお戻りください。」
 神父の言葉に三人が頷き、旅の扉へと急いだ。部屋の中には修道女が頭を下げて出迎えてくれた。
「レオン様、ルーン様、リィン様。あなた方のおかげで人々は救われました。貴方方のことは 今を生きる人々から次の時代の人々へ…そうして永遠に語り継がれていくことでしょう。どうか、お元気で。」
「皆様が居てくださったからですわ。本当にありがとうございます。お元気で。」
 リィンの言葉に二人も頭を下げる。
「うん、またこっちにも遊びに来るよ。よろしくね」
「ええ、いつでもお待ちしております。」
 ルーンの言葉に修道女が答えた。それに頷きを返すと、三人は旅の扉へと飛び込んだ。


 ベラヌールはお祭騒ぎだった。モンスターの姿が消え、ロンダルキアから漂っていた不穏な空気が消えたことで、 噂になっていたロトの勇者たちが世界を平和に導いてくれたことが知れ渡っていたのだ。
 屋台では次々とほぼ無料の食べ物が振舞われ、人々は昼間から酒を飲み、浮かれていた。
「…すごい騒ぎだねー。」
「ロトの勇者はお祭の最中に消えてしまったそうですけれど、なんとなく気持ちがわかりますわね。」
「まぁ、みつかったらえらいことだろうな。…見つからないうちに、町をでようぜ。」
 こそこそと裏通りを行きながら、三人はベラヌールの町を出た。
「…でも、なんか嬉しいな。」
「うん…くすぐったいね。」
 くすくすと笑いながら、地上の浮かれきった気分に、三人は酔いしれた。

「…そういえば…これから、どこに行きますの?」
 リィンの言葉に、レオンが少し考えて言った。
「うーん…とりあえずサマルトリアかローレシアか?リィン、お前これからどうするつもりなんだ?」
「…では、その前に、ムーンブルクに寄って下さいます?」
 リィンの言葉に、ルーンが心配そうに尋ねる。
「ムーンペタじゃなくて?」
「ええ、ムーンブルクですわ。」
「…そっか。王様に会いに行くんだね。」
 ルーンの言葉に、リィンが頷く。
「お父様はもう、わたくしの言葉なんて聞こえないでしょうけれど…それでもきちんとお話しておきくて…だめかしら?」
 不安そうに言ったリィンに、二人が同時に頷いた。
「いいんじゃねーの?」
「うん、僕は賛成だよ。一番に報告しに行こう。」

 ゆっくりと船の舳先がムーンブルクの方に向けられ、風を受けてゆっくりと船が進む。
 陽気な風をいっぱいにうけながら、三人は陽の光の中にあるルビスの加護を感じていた。


 時を越えたラブストーリーの終幕です。
 レオンは誰とくっつくのかと、沢山の方に聞かれたのですが、結果はローラ姫だった…と、言うわけでは ないのですが…
 レオンにとっては、初恋で憧れの人ではあるけれど、手に入れたいとかそういう感情ではないし、ローラにとっては 特別な人ではあるけれど、結局は子供を思う親の愛みたいなものですし…複雑です。ただ、遠い時が流れていく、 その中のわずかな出会いが、二人にとってかけがえのない時であったことは確かだったりするのです。

 さて、次回最終回…の予定です(もしかしたら一話のびるかも…しれませんが。)長きにわたって お付き合い、本当にありがとうございました!!


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