〜 そして、精霊のこどもたちへ 〜 空を見上げていたレオンは、二つの気配に気がつく。 手をつないで楽しそうに歩いてくる二人。 それは本当に楽しそうで、自分も嬉しくなる。 「ま、ちょっと寂しいけどな。」 レオンはひとりごちて、甲板に横になった。 目をつぶり、そのまま二人が来るまでじっと待っていた。 「レオン、お待たせいたしましたわ。起きて下さいませ。」 帰ってくると、レオンは甲板の上で熟睡していた。 「あぁ…おお、リィン、どうだったよ。」 「な、何がですの?」 ほのかに赤くなるリィンに、レオンが笑いをこらえる。からかう意図はまったくなかったが、そう 過剰に反応されると、どうにもおかしい。 「いや、城の方はどうだった?」 「…城の皆は…天国へ昇りましたわ。最後にお父様ともお話できましたわ。」 「そうか、良かったな。」 「レオン、わたくし、国を復興させようと思いますわ。」 すっきりとした表情で言い切ったリィンは、いつも『戦士』の顔をしていた。 「ああ、お前が決めたんなら、それが一番だろうよ。」 レオンはそう笑って、横にいたルーンの元へ向かう。 「やっとわかったか?」 「あははー。」 少しだけ顔を赤くしたルーン。そのルーンにレオンは力いっぱいヘッドロックをかける。 「うわぁ、苦しいよ、レオンー。」 「…良かったな。」 耳元でぼそりとつぶやいて、ルーンを解放した。 「…レオン…」 少しだけ耳が赤いレオンに、ルーンは破顔した。 「レオン大好き!!」 「うわぁぁ、気色悪いこと言うな!!」 後ろからがしっと抱きついてきたルーンにレオンが怒鳴りつける。それはあまりにも平和な光景でリィンは 涙が出るほど笑った。 「いつまでもこうしていては、日が暮れますわ。わたくし、とりあえずローレシアに向かおうと思っておりますけれど、 どうお考えでして?レオン?」 「ああ、そうだな。親父もうるさそうだしな。」 「あ、だったら、ローラの門から通っていった方が近いと思うよ、僕。船だとぐるっと周らないといけないから。」 ルーンの言葉に、リィンが頷く。ちょうど船はムーンブルクの東に止まっている。潮や風の 具合から考えると、モンスターのいない今ならば徒歩の方が若干近いはずだった。 「ですけれど、そうすると夜になるのではなくて?」 「ムーンペタで宿を取ればいいんじゃねーの?」 レオンの言葉に、リィンは少しうつむく。そんなリィンの背中をぽんと叩き、ルーンは笑った。 「うん、そうだね。そうしようよ。」 「だったら、ルーン、お前いっぺんサマルトリアに寄って行ったほうがいいんじゃねーの?親も姫も心配してるだろ?」 「…うーん」 「どうした?」 予想もしなかったルーンにリアクションに、レオンは首をかしげる。横ではリィンが意味ありげにくすくすと笑っていた。 「な、なんだよお前ら、どうしたんだよ。」 「いいえ、なんでもありませんわ。ね、ルーン?」 「うん!」 顔を見合わせてくすくすと笑い合う二人に、レオンはわけもわからず頭を掻いた。 |
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