ヒイラギやヤドリギで飾りつけられた教会は、神官やその見習いなのであろう少年たちがたくさん座っていた。
「空も大地も、我々一人一人すらも、ルビス様がおつくりになられた、大切な財産なのです。お互いに いたわり合い、助け合わねばなりません。そして今日、新たに世界を作り直してくださるという大仕事を 迎えられるルビス様に、我々はなによりも感謝の念を示さねばなりません。」
 祭壇の前には、説教をする神父。堂々とした話し方に威厳を感じた。
 三人は後ろの椅子に腰掛け、その説教をじっと聞いていた。レオンはちらりとルーンを見た。
 ルーンの様子はいつもの変わらない。にこにこと説教を聞いている。
(なに考えてるんだ…?)
 ふと、リィンと目が合う。リィンも同じようで、少し困った様子で首をかしげていた。
「それでは、我々は神に感謝し、一年間のこの古き世界に別れを告げ、新たな世界を迎える事を祈りましょう!」
 神父がそう言うと、皆歓声をあげる。これからは聖誕祭パーティーだ。一年に一度、もっとも盛り上がる そのパーティーを楽しみにしていたのだろう。皆笑顔で教会を出て行く。

「皆様も、是非パーティーに参加して行ってください。」
 後ろから、先ほどの女性が声をかけた。すぐ横には、先ほどまで説教をしていた神父がいる。
「旅のお方ですね。今日ここにいらしたのも、ルビス様のお導きでしょう。どうか楽しんでくださいね。」
 二人の顔は、良く似ていた。おそらく親子なのだろう。
「突然訪れて、申し訳ありませんわ…」
 リィンが頭を下げる。手を振った。
「いえいえ、気にする事はありませんよ。私の教会で一人でも多くの人間が聖誕祭を祝ってくださるなど、 これほど嬉しい事はありません。寝床もきちんと用意して置きますので、お気になさらずに…」
「では、行きましょう。ではパーティー会場に案内しますね。隣の建物でやっているのよ。」
「でも、本当にいいのか?部外者なのに…」
 女性と少し距離をとりながら、レオンが聞く。
「実は言うと、そちらのお嬢さんにとても良く似た方がこの教会にいて、少し他人だとは思えないのよ。是非 紹介したいわ。私の兄ととても仲良しなのよ。」
「…そっか。仲良しは、良い事だよねー」
 そうして、三人は飾り付けられた建物へと入る。すでにたくさんの食事が並べられ、人々は遊びに興じていた。
「お兄ちゃん」
 女性が声を上げた。一人の男性が近づいてくる。
「マリィ。驚いたよ。旅の方を招待したんだって?」
 その顔を見て、レオンとリィンは絶句した。
 そこにいたのは、間違いなく邪神官、ハーゴンだった。


「はじめまして、旅の方。ようこそこの教会へ。歓迎いたしますよ。」
 人の良い笑みを浮かべて機嫌よく挨拶する神官。それは知っている姿より少し若かったけれど、 間違いなくあのロンタルギアの神殿で見た者と同じだった。
「こんにちは。ボク、ルーンって言います。あとはレオンとリィン。三人で旅をしているんです。」
「まだ年若いのに大変だね…僕はハーゴンって言うんだ。こちらの女性はマリィ。君たちにルビス神のご加護があるように、 祈っているよ。どうか今日の聖誕祭楽しんで欲しい。」
 そう笑う青年は、本当に人の良い神官そのものだった。
「え…ええ…」
 一番困惑しているのは、リィンのようだった。ハーゴンはそのリィンをじっと眺める。
「良く似ているね…」
「お兄ちゃんもそう思った?ねぇ、リィンさん?紹介してみたいの、かまわないかしら?」
 ここまで行くと、誰のことかすぐに分かった。それでも、どうしたら良いか分からず、 リィンは助けを求めてルーンに目を向ける。
 ルーンはいつもどおり、にっこりと笑いかけた。それで心が少しだけ落ち着いた。
「…ええ、喜んで。」
「では、少しそこで待っていてくれる?いま連れてくるから。」
「マリィ、僕も探すのを手伝うよ。」
 そう言って、二人は人の中に消えた。

「…ルーン、どういうことなの?」
「ごめんね、僕にも良く分からないんだよ…でも確かにここは、かつてハーゴンが住んでいた教会に 間違いないと思う。」
「…フェオは本当にいるのか?」
 レオンが震える声をだす。ルーンは首を振った。
「居ないよ。フェオさんはロンタルギアの大地で確かに眠っているはず。確かに僕たちで埋めたもの。」
「そう、です、わよね…」
 リィンの声も、少し震えていた。
「でもね、レオン、リィン。良く分からないけど…聖誕祭だもの。僕はきっとルビス様が、がんばったご褒美に 奇跡を起こしてくれたんじゃないかなって思ってるよ。」
「そうなのか?」
「わからないけど。でも理由なんて何でも良いよ。今奇跡が起こってるんだもん。そっちの方がずっと 大切だよ。」
「そう…」
 リィンが同意しようとして顔をあげた。そしてその瞬間、走り出した。
「リィン?!」
 リィンは人波を押し分け、一直線に走る。そして扉から外に出ようとする青年を捕まえた。
「おにい、様…」
「リィン…」
 それは、確かにフェオだった。






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