「すっげぇ…。」 平和なレーべの村。ただ、モンスターが活発化している昨今、その道筋は決して平和とはいえなかった。 だが、結局ルウトとクレアはカルガモの子供のようにエリンの後についてきただけで、何一つしていない。 モンスターが出てきた瞬間、エリンが火炎や爆発で敵を一掃したからだった。 「…これでもまだ本気じゃないんだろう?」 「当然でしょう?さぁ行くわよ。……ここから先は勇者が必要なのよ。」 すたすたと村の奥へと歩いていくエリンに、クレアが声をかける。 「あの!エリン、休まなくても大丈夫ですか?お疲れでは……?」 「平気よ。あれくらいなんともないわ。」 そう応えてエリンは立ち止まって振り返る。 「ああ、でも、貴方達は慣れていないものね。このまま魔法の玉を手に入れて誘いの洞窟を抜けるつもりだったけれど、 初日からそこまでは無理よね。……こっちの用事が終わったら宿を取りましょう。」 その言葉にクレアはホッとする。休めることではない。いつも無表情のエリンが、優しい心を持っていることが 嬉しかったのだ。 エリンは迷わず奥へと進む。急いで後を追いかけながら、ルウトが尋ねる。 「エリンはここに来たことがあるのか?」 「いいえ、初めてよ。アリアハンにも昨日ついたところ。」 誘いの洞窟が封印されていること。それが魔法の玉によって解放されること。 その魔法の玉はレーベにあること。その先に旅の扉があること……アリアハン大陸の 住人ならそこそこの人間が知っていることだが、どうしてエリンが知っているのだろうか。 「なんで知ってるんだ?魔法の玉のこと……。」 エリンは立ち止まる。ルウトに問いかけられたからではなく、目的の、鍵で閉ざされた扉の前に着いたからだった。 「……調べたのは私じゃないわ。行くわよ。」 エリンは小さく呪文を唱えると、鍵はかちゃんと音を立てて開いた。 「なんと!鍵開けの呪文とな?そんな難しい呪文を使い事なすとは……するとお前さんがあの勇者オルテガの……!」 「……呪文を使ったのは、こっちのエリンだがな。」 言葉を遮っていうルウトのことばに、感心している老人は反応せず、黒い玉を取り出してルウトに渡した。 「わしはこれを渡さねばなるまい。……くれぐれも気をつけてな。」 「おい、聞けよおっさん。」 「海の向こうの国々ではアリアハンからの勇者を待ち望んでいるはずじゃ。ぜひとも彼らの助けになって欲しいのじゃ。」 うんうんと頷く老人を置いて、エリンがとっとと家から出て行き、クレアがその後を追う。 「……馬鹿みたい。」 家から出た瞬間、そうつぶやいたエリンに、クレアが震えながら謝る。 「あ、あの、ごめんなさい……。」 「貴方が謝ることじゃないでしょう。怒っていないわ……宿屋に戻りましょう。」 そうエリンが戻ろうとしたとき、ルウトが音を立てて扉を開ける。 「クレア!!」 「ルウト……。」 ルウトはクレアの肩を抱く。その腕にクレアはそっと手を添えた。 「先に行っちまったから心配したぞ。」 「ごめんなさい……。」 「いやいいんだ。あのじーさんぼけてただけだ。気にするな。エリンも、すまん。」 「……貴方が謝ることではないわ。早く宿へ行きましょう。目的の物が手に入れば、ここにはもういる必要がないわ。」 すたすたと冷静に歩いていくエリンを二人は無言で追いかける。そしてエリンは宿の前で立ち止まり、いたずらめいた 笑みを浮かべた。 「……それで?貴方達は同じ部屋でいいの?」 一瞬ぽかんとするが、途端にクレアの顔が真っ赤に染まる。 「別にオレはそれでも……。」 「あ、あああ、ああの、で、できれば個室か、よ、よろしければエリンと同じ部屋に……。」 ルウトを押しのけながら言うクレアの顔に、エリンは初めて年頃の女の子らしくくすくすと可愛く笑った。 |
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