吹き荒れる吹雪と雪原の中、雪を掻き分けながら四人は進む。 「……寒いね。」 「もうすぐのはずよ。方向はあっているわ。」 クレアお手製のマントで体を覆いながら、突き進むと、やがて小さな塔が見えた。四人は一心不乱に足を進めた。 その塔の入り口に近づいた途端、暖かな空気が四人を包む。 「暖かい……。」 「そういや、屋根もないのに雪が降ってねーな、ここ。」 ルウトはそういいながら、雪を払い、防寒具を取る。他の三人もそれに習いながら体を温める。 「結界のような物が張られているのかもね。」 「それにしても高い塔だね。この上に、ラーミアって鳥がいるの?」 「霊鳥ラーミア。不死鳥ラーミアとも呼ばれるわ。結界を解き、必要とされるのならば異世界にまで 飛べるという伝説の鳥よ。行きましょう。」 エリンを先頭に、塔の階段を登り始める。それは塔というよりも、高い、高い祭壇と言った方が正確かもしれない。 最上階につながる階段を、四人はひたすらに上っていく。 最上階で四人を待っていたのは、巨大な巨大な卵。そしてその周りを囲むように、大きな金の燭台が六つ。そして 卵を守るように二人の巫女が立っていた。 「うっわぁ、すっごくおっきな卵だね!!!」 驚きのあまりカザヤが声を出すと、巫女がこちらを向いた。 その二人の巫女は、同じ顔をしていた。そしてその巫女は四人を見ると、まったく同じ声で話し始めた。 「「私たちは卵を守っています。」」 「六つのオーブを金の冠の台座に捧げたとき……。」 「伝説の不死鳥ラーミアは蘇りましょう。」 まるで合唱のようにそう告げる。どうやら周りの燭台のようなものに、オーブを置けばいいらしい。それで ラーミアが蘇るのかとルウトは小さく首を傾げたが、エリンはさっさとオーブを取り出し始めた。 「あ、悪い。オレも手伝うぜ。」 「ありがとう。お願いするわ。」 「私も……これは、どこに収めてもいいのでしょうか?」 クレアの言葉に、巫女は小さく頷く。 「いいみたいだね。じゃあ、せっかくだから、これ、もらうね。」 カザヤが紫を抱えて、一番奥まで走り出す。三人もそれぞれオーブを抱えて台座に備える。その途端にぽっと横に 灯りが燈った。 そして全てを置いたとき、六つのオーブと巨大な卵が呼応しあうように光りだす。そうして、 オーブの中央から光が卵へと入っていった。 「な、なんだ?」 思わず四人は卵の側に寄ると卵は恐ろしい勢いで震えている。 「「わたしたちこの日をどんなに待ち望んでいたことでしょう。」」 巫女は感無量と言った表情で、卵を見つめている。 「さあ祈りましょう。……時は来たれり、今こそ目覚めるとき。」 「「大空はお前のもの!舞い上がれ天高く!!」 まるで呪文のように巫女がそう声を合わせたとき、卵は割れ、中から巨大な美しい鳥が生まれ、礼を言うように 上空を回りながら飛んだ後、ふいっとどこかへ飛んでいった。 「伝説の不死鳥ラーミアは蘇りました。」 「ラーミアは神のしもべ。心正しきものだけがその背に乗ることを許されるのです。」 「さあ、ラーミアがあなた方を待っています。外に出て御覧なさい。」 巫女にそう促され、四人は塔を降りていく。 「……ルウトにーちゃん、クレアねーちゃん、どうしたの?なんか浮かない顔だよね。」 カザヤが二人の顔を覗き込む。クレアはびくっとして、なんとか笑みを浮かべる。 「いえ、なんというか、驚いてしまって……すごく大きくて綺麗だったから……。」 「いや、オレは心正しき者って自信ねーなって思ってな。乗れなかったらどうするよ。」 ルウトは空を仰ぎながら言う。そんなルウトにエリンは笑った。 「心配ないわよ。ルウト、貴方はちゃんとブルーオーブを取ってこられたじゃない。きちんと認められているはずよ。」 「えっと、エリン、私も……あまり自信がないです……。」 おずおずと言うクレアに、ルウトはぽんっと頭を乗せる。 「クレアは心配いらねーよ。オレのクレアが認められないはずはないからな。」 「まぁさ、とりあえず言ってみようよ。」 カザヤがひょいっと階段を下り、塔の結界を出ると、あれほどひどかった吹雪は収まっていた。そしてその白い世界にさえ 勝る真っ白なラーミアがじっとこちらを見ていた。 きらきらと光る美しい尾羽。赤く輝くとさか。まさしく神の鳥と呼ぶにふさわしい鳥は、ただ穏やかな視線を こちらに向けている。 「うわー、すごく大きな鳥だー。君がラーミア?」 感心した声を上げるカザヤの横で、クレアは戸惑いながらそっと手を伸ばす。 「……あの、その、……乗せてくださると聞きましたが、私のようなものでも、乗せてくださいますでしょうか……?」 ラーミアは何も言わず、ただじっとクレアを見つめる。 「ずっとルウトは勇者として頑張ってくださいました。エリンはたくさんの力と知識で導いてくださいました。カザヤは 大事な者を置いて、一緒に来てくださいました。……私はただ目をそむけてきただけです。それでも……大丈夫でしょうか?」 ラーミアは小さく頷いた。エリンはそのうしろからぽん、と肩を叩く。 「クレア、大丈夫よ。貴方にもとても助けられているのよ?」 「クレアねーちゃんのご飯もおいしいし、たくさん回復してくれてるじゃないか。」 カザヤもそう言って、エリンに続いてラーミアによじ登っていく。そして。 「クレア……違うって。クレアは頑張ってる。オレをちゃんと支えてくれてる。精神的にもそうだが、 ちゃんとさ、戦闘でも色々……気がついてないかも知れねーけど、立派な戦力なんだぜ?クレアは逃げずにここまで 来たんだからさ。」 そういいながら、ルウトはクレアを背中から抱きしめた。 「ルウト……。」 「一緒に魔王の城まで来てくれるか?」 「……はい、ルウト。」 クレアは頷くと、ルウトと一緒にラーミアに登る。ルウトはラーミアの首近くに立つと、広い背にそれぞれ 座っている三人を見た。 「なあ、三人とも。オレ、魔王を倒したら三人に言わなきゃいけないことがあるんだ。だから、 生きて帰ろうぜ。」 「ええ、当然よ。」 エリンが笑う。 「もちろんだよ!」 カザヤが元気に答える。 そしてその横で、クレアが小さく頷くのを見ると、ルウトはくるりと反転し、まっすぐ北を指差した。 「行ってくれ、ラーミア!ここから北、魔王バラモス城へ!!!」 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||